研究課題/領域番号 |
18K02988
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
荒井 隆行 上智大学, 理工学部, 教授 (80266072)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 科学教育 / 音響教育 / 音声生成 / 声道模型 / 博物館・科学館 |
研究実績の概要 |
多様な言語の母音・子音に関する生成機構を解明しつつ分かりやすくモデル化し、博物館・科学館や教育現場での使用を前提に模型を中心とした教材・教育プログラムの開発等を進めた。見た目がより人間の顔に近いタイプでは、軟らかい舌を使って動的モデルを製作し国際会議INTERSPEECHで報告した。毎年夏に展示を行ってきた国立科学博物館のサイエンススクエアでは、例年通り日本語の母音が発せられる筒型の声道模型の他、見た目が人間の顔に近いタイプで母音/a/の静的モデルをポンプとリード式音源と組み合わせた。スライド式の声道模型を普及させるため、リード式音源を含めて異なるサイズの組み合わせを試した。 今まで開発してきた様々な模型をベースに、足りない模型を追加で開発し、説明などを整理して教育プログラムをいったん体系化した。その内容が書かれた章を含む教科書(Handbook of Phonetics)が刊行されると同時、これまでの取り組みが国際組織ISCA(国際音声コミュニケーション学会)に認められ、Distinguished Lecturerに選ばれた。 そこで、模型を使った音声科学の基礎となる講義をインドネシア(3都市4大学)にて行い、日本国内でも2つの国際会議での招待講演や大学での講義を実施した。 カナダ・ドイツ・フランス・エストニア・インドネシア・オーストラリア・英国・インドなどの博物館や教育機関などと連携し、声道模型を使っていただくなど、国際的にも活用と評価を実施。Acoustic-Phonetics Demonstrations (APD)のサイトからは声道模型の3Dプリンタ用ファイルを引き続き公開している。その他、音声生成機構の解明がNHK Eテレ「えいごであそぼ with Orton」実験監修などでも生かされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
博物館・科学館や教育機関等との連携が本課題の要となっているが、国内外での連携が進んでいるため。国立科学博物館ではサイエンススクエアでの展示において、新しい声道模型を使用してその評価を行うなど。カナダのQueen's Universityには、リード式音源とエアポンプを組み合わせた音源セットを送って評価。ドイツではUniveristy of Mannheimにてvon Kempelenによるspeaking machineの復元模型用にリード式音源を送って評価。同じくドイツのHaendel-Hausでは、以前から使っていただいている我々が開発した声道模型に対して、新しい金属製リード式音源を送って評価。エストニア国立博物館においても、我々が開発したエストニア語母音の声道模型に対して、新しい金属製リード式音源を送って評価。フランスでは、パリにある博物館 Palais de la Decouverte にて、声道模型を交えたデモンストレーションを実施してもらった。インドネシアでは、4大学(Satya Wacana Christian University, Maranatha Christian University, Bandung Institute of Technology, Multimedia Nusantra University)にて声道模型を中心とした音声科学の基礎的な講義を行って回った(ISCA Distinguished Lecturerとして)。その他、声道模型のデモを交えた授業を東京医科歯科大学、横浜共立学園高等学校、国立リハビリテーション学院で行った。また、Ahmedabad Univ.(インド)、Melbourne Univ.(オーストラリア)、Sheffield Univ.(英国)、九州大学、埼玉大学などで模型や音源を使っていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、見た目がより人間の顔に近い(解剖模型風の)タイプでは、軟らかい舌を使って、さらに顎が回転するような動的モデルを製作している。試作では動きがややぎこちなく、その改良を試みる予定である。また、同じく解剖模型タイプでは、軟らかい素材の舌を固定する方法を工夫し、より安価に模型の実現を同時に目指す。スライド式声道模型とリード式音源とで異なるサイズの様々な組み合わせを試みているので、その中から最適なものを選びつつ、今後、博物館・科学館や教育機関等に広く使っていただけるようなものを開発したい。母音に加え子音も複数試みているので、摩擦音を含めその範囲をさらに充実させる予定である。そして動的模型について、PCで動きの制御をさらに追及し、連続発話や歌唱の可能性もより深く探る。そして、それら主要な研究成果や教育上有益な情報・デモンストレーション・動画などをWeb上で公開中のAcoustic-Phonetics Demonstrations (APD)にてさらに追加公開することで、成果を社会に還元し、より多くの方々に利用してもらうことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度末(2019年3月下旬)に、解剖模型タイプの声道模型に対する周波数特性測定、同模型の断面積データ抽出、英文校閲などを行ったため会計処理が次年度となった。
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