研究課題/領域番号 |
18K02995
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
辻 琢人 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70321502)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 半導体発光デバイス / 発光ダイオード / 作製教材 |
研究実績の概要 |
現在の高度情報化社会を支える半導体デバイスのものづくり実験を高専で実施することは様々な制約によって容易ではない.本研究は,現代社会に欠かすことのできない存在となった半導体発光デバイスの作製技術とその動作原理を理論と実践の両面から効果的に習得することに繋がる「半導体発光デバイス作製教材」の開発に取り組んでいる.半導体発光デバイスは,母材となるIII-V族化合物半導体によって様々な波長で発光するが,本研究では可視光域(波長:400-700nm)で発光する発光ダイオード(LED)の作製を試みている. 可視光域で発光する発光ダイオードの作製には,可視光が得られる適当なバンドギャップエネルギー(Eg:1.8-3.1eV程度)のIII-V族化合物半導体を選定しなければならない.本研究では,黄緑色もしくは赤色の可視発光が得られ,環境への負荷も小さいリン化ガリウム(GaP)を選択した. また,半導体デバイスを動作させるためには,半導体に良好な金属電極を形成しなければならないため,GaPに電圧を印加して効率的に電流を流すことのできる電極材料を検討した.本研究では一般にIII-V族化合物半導体に良好な電極を形成するのに用いられる金(Au)をベースにした金属ではなく,より安価で比較的入手しやすいインジウム(In)をベースにした金属を用いた電極を形成し電気的特性を評価した.その結果,n型GaPにIn,p型GaPにはインジウム・亜鉛合金(InZn)を用いることで,印加した電圧に対して電流が線形に変化する良好なオーミック電極が得られた. そして,窒素(N)を添加して黄緑色で発光するGaP発光層のn型側にIn,p型側にInZn電極を形成したGaP-LED構造を作製し,良好な電流-電圧特性が得られた上, GaP-LEDから黄緑色の発光が得られることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,簡易な工程を用いて可視光域(波長:400-700nm)で発光する半導体発光デバイスを作製する教材を開発し,それを学生への教育を始めとする様々な教育活動で応用することである.この目的の達成を目指して,本研究では,数多く存在するIII-V族化合物半導体の中から,黄緑色もしくは赤色の発光が得られ,環境への負荷も小さいGaP(バンドギャップエネルギー:Eg=2.26eV)を用いることにした. 半導体発光デバイスは,発光層を形成したIII-V族化合物半導体(本研究ではGaP)に数V程度の電圧を印加して電流を流すことによって発光が得られる.昨年度までの取り組みの結果, n型GaPにはIn,p型GaPにはインジウム・亜鉛合金(InZn)を用いることで,印加した電圧と流れる電流が線形に変化する良好なオーミック電極が得られた.さらに,Inは融点が約157℃と金属としては低いため,In及びInZnを使ってGaPに電極を形成する際に,通常必要となる真空を要する工程を使うことなく,大気環境の状態でGaPに良好な金属電極を形成できる簡易な工程が確立できた. このように,LEDの発光層となるGaPにIn系金属を使って良好な電極が形成できたので,窒素を添加して黄緑色で発光するGaP発光層のn型側にIn,p型側にInZn電極を形成したGaP-LED構造(InZn/p-GaP/n-GaP/In)を作製し,良好な電流-電圧特性が得られた上, GaP-LEDから波長567nmの黄緑色の発光が得られた. このように,In系金属を使うことによって簡易な工程でGaPに良好な電極を形成でき,また,それを使って作製したGaP-LEDから黄緑色の可視発光が得られたことから,本研究課題の研究目的に対する本年度までの達成度は,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの取り組みによって,半導体発光デバイス作製教材を開発する上で必要となるIII-V族化合物半導体を検討してGaPを選定し,また,克服しなければならない課題の一つであった,発光デバイスの母材となるIII-V族化合物半導体(本研究ではGaP)と良好な電流-電圧特性を示す金属電極を,In系金属を用いることで真空を要する工程を使うことなく,大気環境の状態での簡易な工程で形成できる見通しが得られた. そして,窒素を添加して黄緑色で発光するGaP発光層のn型側にIn,p型側にはInZn電極を形成した,InZn/p-GaP/n-GaP/In構造のGaP-LEDを作製し,良好な電流-電圧特性が得られた上, GaP-LEDから波長567nmの黄緑色の明るい発光が得られることが確認できた. このように,本研究目的の達成に極めて重要となる可視光域で発光するLEDを簡易な工程で作製する教材を開発する見通しは概ね得られたのではないかと思われる. これまでに得られた成果を基にして,今後は,教育活動への応用を視野に入れ,開発の見通しが概ね得られた半導体発光デバイス作製教材の作製工程・作製条件の最適化を図りながら,半導体発光デバイス作製教材を使った,学生への教育を始めとする様々な教育活動への展開についての検討を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は立案した研究計画に従って,おおむね順調に進展しているが,購入予定だった備品及び消耗品などの購入及び導入を研究の遂行にあわせて再検討するなどしたため次年度使用額が生じた. 半導体発光デバイス作製教材の開発には,半導体発光デバイスの母材の半導体であるGaP基板,電極材料,不純物拡散剤,薬品など多くの消耗品が必要となり,また研究成果をまとめ,学会などで発表する機会もあることから,主にそのような用途に使用する予定にしている.
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