従来の研究知見によれば、人々は集団に同一化するほど、「公正」などの集団規範に従いやすく、集団活動に協力的になることが知られている。本研究では、人々が国や社会に関連付けて抱くアイデンティティが社会的連帯を強める心理的要因となり、国民皆保険と保険料方式を採用する我が国の福祉制度のあり方に支持的な態度が強められるかどうかの検討を行う。また、自らが置かれた経済状態や福祉制度の受給・利用状況が与える規範的態度への影響についても検討する。 平成30年度は、「福祉と公平感に関するアンケート」と称して、平成31年2月1日(金)~2月22日(金)にかけて、5都市10地域に居住する、平成31年1月1日時点で満18歳以上、85歳以下の男女個人を対象とする質問紙調査を実施した。対象地区は、東京都(台東区・足立区)、大阪市(西成区・生野区)、名古屋市(中村区・南区)、札幌市(白石区・東区)、福岡市(東区・博多区)である。5都市10地域の選挙人名簿から、系統抽出・割当法により調査対象に該当する2,000名を抽出し、郵送により配布、返信用封筒で回収を行った。回収数は721件であり、回収率は36.1%であった。 質問紙で測定を試みた内容は以下の通りである。1.加入している社会福祉制度、2.日本社会、日本政府、日本の社会福祉に対する態度、3.生活に関して感じる不安、余暇の過ごし方・宗教活動・ボランティア活動などの個人のライフスタイルの様子、幸福感、4.年齢、性別、労働形態、家族構成、資産・負債の有無など。 現在、回収したデータについて、統計学的手法による分析を行っている。
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