本研究は、今後の手口の変遷にも対応可能な、詐欺被害リスク低減に有効な対処行動を抽出することを目的とする。これまで特殊詐欺の様々な手口を詳細に説明し、該当する場合は詐欺だと判断するよう広報されてきている。しかし、架空請求詐欺の未既遂被害者を対象とした調査では、被害者にとって想定外の手口が用いられた場合に、被害の既遂化リスクが高まることが明らかとなっている。被害者自身が知っている手口ではない欺罔によって、被害者が真正で対応が必要な問題であると誤認して、金銭をだまし取られないようにするためには、被害者の対処能力の向上が求められ、本研究はその知見提供を企図するものである。 3年計画の研究の初年度である平成30年度は、被害の既遂化に影響する対処行動を抽出することを目的として、調査趣旨を説明した上で調査協力を承諾した既遂被害者と未遂被害者に対して、半構造化面接による調査に着手することを計画していたが、関係機関との調整に時間を要したこと、事件の認知件数が想定を大幅に下回ったことから、調査の対象者となりうる被害者への調査依頼が十分に進められず、調査実施には至らなかった。 その一方で、関係機関が実施した被害者に対する質問紙を用いた聞き取り調査のデータ(過去5年分)の提供を受け、分析を進めた。結果として、設定した選択肢に該当しない回答項目が多く、自由記入欄の内容分析を中心に実施する必要があることが明らかとなった。
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