研究課題/領域番号 |
18K03001
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
礒部 智加衣 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20420507)
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研究分担者 |
相馬 敏彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (60412467)
古川 善也 広島大学, 教育学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD) (50826477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 組織対応への評価 / 逸脱行為 / 補償行動 / 罪悪感と恥 |
研究実績の概要 |
本研究では、逸脱行為の組織性、それに関する組織の声明における補償行動の示唆と組織感情が、組織評価・対応評価に及ぼす影響を検討した。内集団における逸脱行為に対する評価については、病院に勤める看護師を対象に場面想定法による調査を行った。また、第三者が同場面においてどのように評価・判断するのかを検討するために、インターネットを介して社会人を対象に調査を行った。 組織評価は、内集団における逸脱行為に関しては、組織が恥を示しつつ補償行動を行わないとした場合に低いことが示された。個人の失敗において恥感情は自己評価と関連するという知見と一致する。一方、礒部(2018)とは異なる。異なる結果が示された理由としては、集団に対する事前の態度が考えられる。本調査の対象者においては所属する集団に対する事前の集団自尊心が高かった。一方、第三者が評価する場合には、補償の有無の影響が大きいことが再確認された。また、組織性の逸脱行為であった場合、組織が罪悪感よりも恥を表明したほうが組織評価が高まることが示された。この結果は、(Giner-Sorolla et al., 2008)を支持し、集団の恥は組織の自責を意味しており、組織が責任を認めていると捉えた可能性が考えられる。 組織責任の認知においては、内集団を対象とした場合には組織性の効果が認められたが、第三者においては組織性の効果は認められなかった。また、第三者よりも内集団成員の方が、組織責任を感じやすい傾向にあった。 個人特性として評判を気にする程度(De Cremer, & Tyler, 2005)の検討も行った。評判を気にする人ほど、組織が恥や罪悪感情・怒りが高いと認知する傾向にあった。内集団を評価する場合には評判を気にする人ほどネガティブに、第三者として評価する場合にはポジティブに組織対応を評価することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、非組織性逸脱行為に対する集合的感情と組織対応の影響を検討することを課題とし、異なる対象に対し調査を行った。非組織性逸脱行為に対する組織対応の有効性を検討するために、組織性逸脱行為に対する対応に関しても検討を行った。 補償行動を示唆しない場合において、恥と罪悪感のどちらが内集団成員の評価を高めるかについては、先行研究の結果と一貫せず、事前の集団への態度の調整効果を検討する必要性が示された。先行研究によると組織的な行為かどうかは重要な要因になることが示されていたが、本研究では、第三者として評価する場合においては、組織性であるかどうかよりも組織が補償行動を示唆するかどうかが重要であることが示された。この理由としては、迷惑行為の被害程度にあると考えれられる。また、組織対応の評価において自己がどのように判断するかと世間がどのように判断するかをそれぞれ測定したことにより、世論の認知にずれがある可能性が示唆された。 上記のように、計画にそった研究を行い新たな課題が明確となった。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通り、補償行動を示唆しない場合において、恥と罪悪感のどちらが内集団成員の評価を高めるかについては、先行研究の結果と一貫しなかったため、組織に対する事前の態度の調整効果を検討する予定である。加えて、引き続き、迷惑行為の種類やレベル、謝罪・補償行動の内容やレベルを変更し、謝罪の効果性についての調査・実験を行う。 その際、世論と自己評価のズレ、およびそれらが評判を気にする程度とどのような関係性にあるのかを明らかにすることが新たな課題である。2018年度の検討により、評判を気にする程度により、集合的感情の感じやすさ、認知しやすさが異なることが明らかになった。特に、迷惑行為や組織対応に関して、内集団として評価する場合と第三者として評価する場合では、評判を気にする程度の高さが異なる反応を示していた。この点を掘り下げ、世間の認知と評判を気にする程度の相互影響過程が、所属組織における迷惑行為への対応評価と、所属していない組織における迷惑行為への対応評価にどのような違いをもたらすのかを検討する。同様に、逸脱行為の許容に関する個人差として知られる公正感についても、組織性-非組織性逸脱行為に対する組織対応の評価にどのような調整効果をもたらすかについて検討を進める予定である。
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