研究課題/領域番号 |
18K03001
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
礒部 智加衣 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20420507)
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研究分担者 |
相馬 敏彦 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (60412467)
古川 善也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (50826477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 組織謝罪 / 逸脱行為 / 補償行動 / 集合的感情 |
研究実績の概要 |
これまでの研究より、組織性・非組織性の逸脱(迷惑)行為に対する、組織対応への必要性や批判は、多元的無知(自分以上に、世論は組織の対応を求めていると考えている)によることが示唆された。そこで本年度は、世間が組織性逸脱行為に対してどのような反応をしているのかについては言及せず、迷惑行為に対する組織感情(恥-罪悪)と補償行動の有無を操作した場面を想定し、組織への評価や逸脱行為への評価を検討した。その結果(分析対象N=103、age23-65,mean=46.6,SD=10.40、男性・女性=38名)、これまでと同様に補償を行うことが、組織の肯定的な評価につながることが全般的に確認された。恥だとして補償行動を行った条件において、組織に責任がないと判断される傾向示された。また、自分より世間が逸脱行為の責任が組織にある、世間より自分のほうがその責任は行為者個人にあるとしていた。その一方で、逸脱行為を行った成員の属する組織に対する評価は低い。これらの結果は、逸脱行為の責任が成員にある場合でも、補償行動を行うほうが良い組織だと判断されやすいことを意味する。加えて、社会的迷惑行為に対する批判的な態度と不安状態との関連を相関を検討した結果、新型コロナウィルスへの不安や社会情勢による不安が高いほど、迷惑であると認知することが認められたが、それが組織への批判を高めるという関連は認められなかった。また、評判を気にする人ほど、迷惑行為を行った組織成員が罪悪感や恥を感じていると推測しやすいという弱い関連が認められたが、組織に対する批判的な態度との直接的関連は認められなかった。 また、非倫理的組織行動の生起においてメンバーの道徳性が関連していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、組織成員の迷惑行為に対する組織対応について、世論の推測がもたらす影響をさらに考慮した検討を進めた。また、社会情勢を配慮した視点からの研究も加えて行っており、不安な状態が、逸脱行為に対する否定的な評価に関連があることが再度確認された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を整理し、要因の効果を整理し統合的に説明することを目指す。そのために、迷惑行為の違い(迷惑レベルや道徳性の違い)によって、組織対応への評価が異なるかをさらに検討する。また、社会的逸脱行為およびそれへの組織対応に対する不寛容性に及ぼす個人特性について精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に発表を予定していた受理済みの国際学会(International Congress of Psychology)が2021年度開催となり、それにまつわる諸経費を次年度(2021)に持ち越した。
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