本研究課題は,日常のメンタルヘルスの評価方法として潜在連合テスト(Implicit Association Test)に着目し,スマートフォン上で潜在連合テストを実施するウェブアプリケーションを開発し,その測定の妥当性を検証することを目指すものである。 令和2年度はスマートフォン上で潜在連合テストを実施するためのウェブアプリケーションの更新作業と実証実験を行った。まず,更新作業によって,前年度の課題となっていた「異常出力への対応」「他のウェブアンケートとのデータの紐づけ」が可能となった。そして,実証実験では,single-blocked IATを用いたメンタルヘルスの評価を行った。クラウドソーシングにより実験参加者2000名(分析対象は1680名)を集め,パソコンまたはスマートフォン(タブレットを含む)の実施環境でsingle-blocked IATとSTAIアンケートによるストレス状態の測定を行った。その結果,single-blocked IATにおける全体の平均反応時間およびDスコアでは実施環境間に差はみられなかった。STAIアンケートにおいては実施環境間に差はみられたものの,効果量は小さかった。したがって,スマートフォン上でもパソコン上と同様の結果が得られることが確認されたことから,single-bolcked IATについてもスマートフォンで実施可能であると考えられる。今後は,メンタルヘルス以外の個人特性の測定の適用可能性について検討してく必要があるだろう。
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