研究課題/領域番号 |
18K03003
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高井 次郎 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (00254269)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 関係流動性 / 自意識 / 文化的自己観 / 自己呈示 / 直接的コミュニケーション / 間接的コミュニケーション |
研究実績の概要 |
コロナ禍が長引いていることから、データ収集をオンライン・クラウドソーシングに頼ることにし、4ヵ国比較の一部の国(日本および米国)で活用し、データ収集を終えた。カナダも同時に募集したが、目標の500人の10分の1にしか満たず、別の方法を考えなければならない。一方、中国にはクラウドソーシングがなく、学生を介してスノーボールサンプリングを実施する必要性があるため、今後その手続きを進める。 日米のデータを分析し、概ね予測していた結果は得られているものの、アメリカのデータに回答の偏りが顕著なため、データの取り直しを視野に入れ、残り2ヵ国のデータ収集と合わせて次年度に引き継ぐ。日本のデータは期待通りであり、問題はなかった。研究計画で予想した通り、日本人は相互作用相手の親密性および地位格差に反応し、直接的方略を親密・同地位の相手に対し好む一方で、間接方略を疎遠・地位上の相手に対して選ぶ。また、関係流動性、文化的自己観、公的・私的自意識、文化的寛容性・厳格性、自己制御焦点のいずれもコミュニケーション方略に対して、直接的影響があると同時に、関係親密性・地位格差・状況を媒介しての影響があることが示され、予想していた結果がなった。しかし、あくまでも現時点では日本人のデータについての見解である。 まだすべての国でのデータがそろっていないため、本研究の重要性については言及できないが、少なくても日本人に対しては、対人コミュニケーションに関係性やコミュニケーションの状況によって、直接的・間接的法力を使い分けることが示されており、日本人とのコミュニケーションが高コンテキストであり、その規範を知らないと効果的なコミュニケーションが取れないことが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、データ収集には大学生を介してスノーボールサンプリング法を用いることであった。そのため、各国の大学においてデータを収集するための海外渡航を意図していたが、コロナ禍のためそれが実現できなくなった。クラウドソーシングによるオンラインデータ収集には、回答者の偏りや回答行動の誠実さの問題などがあり、できるだけ活用は回避していたが、一向にコロナ禍の終わりが見えないことから、クラウドでデータを集め始めた。日本でのデータ収集は質が高かった一方で、アメリカのデータには天井効果などの偏った回答が確認されたため、やり直す必要がある。カナダでのデータ収集は、クラウドソーシングを試みたが、ほとんど集まらなかったため、別の会社に委託することを検討中である。中国のデータ収集は、台湾に切り替え、クラウドソーシングを用いるか、天津工科大学の研究協力者にスノーボールサンプリングを依頼するか現在検討中である。 以上のように、データ収集に問題が発生しているため、研究は遅れを取っているが、それを乗り越える手段の見当はついており、2022年度中の完成は実現できる見通しとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度National Communication Associationの年次大会において、日米比較をもととした論文2篇の発表申込を行い(The effect of relational mobility and self-construals on interpersonal communication directness/indirectness: A Japan-US comparisonおよびThe effect of relational mobility, self-construal and cultural tightness on self-presentation motives: A Japan-US comparison)、現在審査中である。受理されれば、11月に米国において発表を行う。 データ収集に関しては、5月から取り組み、日本以外の3か国のデータを集める。そのため、中国の研究協力者を日本に招へいするか、自分から中国に出向く。データがそろったら直ちに分析を実施する。秋には次年度学会発表に向けて論文等にまとめる。2023年度International Communication Associationの年次大会での発表を目指し、発表申込のためのFull paperを準備する。秋以降、これを投稿論文に発展し、科研の最終年度報告書も同時に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで海外出張旅費を計上していたが、コロナ禍による行動制限によって実現できず、また調査委託費の一部が当該年度中に請求されなかったため、繰り越す必要が生じた。 本年度はこれまでの研究成果の発表のため、またデータ収集のため海外出張を見込んでおり、昨年度実施できなかった活動に割り当てる予定である。また、割安な調査会社を通じてクラウドソーシングをしたが、データの質が悪かったため、アメリカのデータは再度別の会社に調査委託する予定である。まだデータが集まっていないカナダおよび中国に関しても同様に調査委託を行う。データコーディング・解析および資料整理のため、研究補助者を雇用する。
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