研究課題/領域番号 |
18K03004
|
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
竹村 幸祐 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20595805)
|
研究分担者 |
清水 裕士 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60621604)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 文化 / 社会生態学的アプローチ / 適応 / 逸脱 |
研究実績の概要 |
本研究は、心理過程の文化差と環境の関係を分析するにあたり、文化内の周辺的存在(分布の端に位置する者たち)の役割を明らかにする。これまでの研究から、文化のメインストリームからの逸脱に寛容な文化ほど、社会生態環境(e.g., 病原体の蔓延しやすさ)に適応した心理・行動傾向を多くの個人が獲得しやすいと考えられる。本研究は、この仮説の妥当性を検討しつつ、文化の分析において周辺的存在を扱う方法論を構築する。 2018年度(育児休業による中断期間を除く半年間)には、既存のデータベース(世界価値観調査のデータベース)や、先行研究の報告している国別スコア(e.g., Gelfand et al. [2011] の報告している国別tightnessスコア)を用いて、国単位の分析を進めた。この一連の分析では、各国の文化が逸脱に対して寛容な程度の指標として、tightness(強い社会規範を持ち、逸脱行動に非寛容な状態)を用いた。社会生態環境(e.g., 病原体の蔓延しやすさ、経済発展度、関係流動性)と心理・行動傾向(e.g., 集団主義、個人主義、一般的信頼)の相関関係に対して、tightnessが干渉効果を持つかを検討したところ、一部で予測された干渉効果が確認された。すなわち、tightnessスコアが低い(i.e., 逸脱に寛容である)国ほど、社会生態環境と心理・行動傾向が、適応的な方向で相関関係を示しやすかった。一方で、こうした干渉効果が見られないケースや、仮説から予測されるのとは逆方向の干渉効果が見られたケースもあった。現在、逸脱への寛容さが、当該社会における適応的傾向の獲得を促進する境界条件を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
育児休業取得に伴う中断はあったものの、おおむね順調に進んでいる。2018年度には、予定していた通りに多国データの分析を実施し、そこから一定の知見を得ている。その中で、2019年度に実施予定の日本国内多地域での調査のための準備も兼ねて、先行研究により検討されてきた社会生態学的環境変数と心理・行動傾向のリストも作成できた。
|
今後の研究の推進方策 |
当初に予定していた順序で計画を進める。すなわち、まずは多国間・時系列データの分析を継続して行う。それに続き、2019年度に、日本国内多地域データの収集と分析を行う。この中で、「逸脱」を分布の形状から表現する方法論を構築する。以上に加えて、シミュレーションによるモデル研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
育児休業により事業中断した。そのため、研究活動を実質的に実施できた期間は半年であった。このため、次年度使用額を生むこととなった。
|