本年度は、親密さによる嫌悪感調節について、2つの予備調査、オンラインでの場面想定法実験、実験室での場面想定法及び脈波測定実験を実施した。具体的には、予備調査1において、親しい間柄であれば嫌悪を感じないが、親しくない間柄であれば嫌悪を感じるような行為を自由に記述してもらい、それに基づき18種類のシナリオを作成した。例えば、飲み物の回し飲み、看病などが含まれた。予備調査2では、参加者に親しい相手か親しくはないが名前や顔は知っている相手を想像してもらい、その相手と上記の18種類の行動をするとしたらどれくらい嫌悪を感じるかを回答してもらった。その結果、仮説通り、親密な相手ほど嫌悪が低くなるという結果が得られたが、「けがらわしい」、「おぞましい」といった強い表現の嫌悪項目でほとんど回答に分散がみられなかった。そこで、オンライン調査では表現を弱めた項目を用いて、親密な相手ほど嫌悪が低く経験されるという仮説を検討した。結果は、仮説を支持し、親密な相手であれば同性の場合でも異性の場合でも、親密でない同性(または異性)の相手と比較して嫌悪が低くなることが確認された。次に、親密さによる調整が強く観察された10項目を選び、脈波を測定しつつ、それらのシナリオについて想像してもらい、親密でないほど嫌悪が強く、その結果、心拍の低下が観察されるかを検討した。しかし、結果は仮説を支持せず、自己報告では嫌悪の調整が見られたが、親密でない相手に対して心拍の低下が強く観察されることはなかった。今後、データを増やすことで、この結果の頑健さを確認する必要がある。
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