研究課題/領域番号 |
18K03007
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森永 康子 広島大学, 教育学研究科, 教授 (60203999)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジェンダー / システム正当化 / 経済格差 / 好意的性差別態度 / ステレオタイプ |
研究実績の概要 |
本研究は,日本においてジェンダー格差が肯定・維持されるしくみの心理学的基盤について検討することを目的とする。この心理的メカニズムにはさまざまなプロセスがあることが考えられる。例えば,女性による女性に対する差別的態度やステレオタイプに反する女性への差別的評価や非難などである。こうした検討を進めると同時に,2018年度はジェンダー格差を如実に示す経済格差を取り上げた。従来のシステム正当化に関する研究から,現状の社会システムを正当化することと個人の主観的幸福感が関連していることが示唆されている。つまり,給与の面で見られる男女格差を当然のことだと受け入れる人の方が,そうでない人よりも,幸福感を高く感じていると考えられる。さらに,システム正当化理論から,平均給与の低い人(=女性)の方が平均給与の高い人(男性)よりも正当化の程度が高いことが予測される。 この仮説を検討するために,まず,給与における男女格差を受容する程度(経済格差正当化)を測定する項目を作成した。次に,ネット調査により,成人男女を対象に,経済格差正当化と主観的幸福感(人生満足度と主観的な社会的地位)を尋ねたところ,正当化に男女差は見られなかったものの,女性の中だけの分析で,個人の収入が低い場合には正当化の程度が高いほど人生満足度が高いが,収入が高い場合には正当化の差異は人生満足度に効果を持たないことが示され,仮説が部分的に支持された。 また,この研究では同時に好意的性差別態度(BS)についても検討した。BSとは,ネガティブなステレオタイプがもとにありながらも「女性には女性の素晴らしい特性がある」のように表面的にはポジティブな態度であり,これもジェンダー格差を維持させるものと考えられている。BSが高い男性は主観的幸福感が高いという結果が得られており,BSがシステム正当化の機能を持っていることがうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は経済格差正当化に関する2つの実験を計画していたが,1つのみに終わった。しかしながら,これは2017年度に公開した研究成果(女性の数学意欲とステレオタイプに関する研究)に関連する発展があり,本研究課題に割けるエフォートが小さくなったためである。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は研究の遅れが見られたものの,収入の低い女性が経済格差を肯定することで幸福感を高めるという,本研究課題の基礎的な部分を押さえることができた。2019年度は,本研究課題の中心的テーマである女性のキャリア選択行動を取り上げ検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の最終月(3月)に参加予定であった学会に参加しなかったため,残額が出た。これは2019年度に参加する国際学会の旅費に充当する予定である。
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