研究課題/領域番号 |
18K03009
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
加藤 潤三 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (30388649)
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研究分担者 |
前村 奈央佳 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632238)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地方回帰型移住 / 移住者 / 地域選択 / 適応 |
研究実績の概要 |
本研究は、都市から地方への移住を地方回帰型移住と定義し、このタイプの移住における移住者の地域選択要因と適応プロセスを検討することを主目的とする。 今年度は、昨年度実施できなかった全国規模のWeb調査および沖縄をフィールドとする追加のインタビュー調査を計画していたが、研究代表者の研究機関の異動とそれに伴う研究フィールドからの離脱、研究分担者の産休、新型コロナによるインタビューの中止など、研究の遂行にとって支障となる事態が発生した。そのため、前年度に実施したインタビューデータに対する綿密な質的分析を実施した。 質的テキスト分析法(クカーツ,2002)により、昨年度実施した13名の移住者のデータ、および過去(2012・2013年)に実施した26名分のデータも補足的に合わせて、分析を行った。 分析の結果、時系列的・時間的な観点も考慮したメインカテゴリー(『』で表記、「」内はサブカテゴリー)の関係性としては、まず「個人のライフスタイルや価値観、嗜好性、物理的環境、文化的環境」などの『居住地域の選択的要因』を起点に、「あこがれ、思い出」などの『訪問経験』や「沖縄出身の恋人の存在」など『移住先の人とのつながり』がPull要因として移住を促進させる。また移住前の地域での生活や人間関係の『リセット』などが移住のPush要因として作用する。移住後からは、「職業的な成功・安定、ソーシャルキャピタルの獲得、サードプレイスの獲得」など『プラスの変化・出来事』が移住者の適応を促進させる反面、「労働環境の悪さ、疎外感・排斥感、人間関係のトラブル」など『マイナスの変化・出来事』が適応を阻害する。『適応状態』にも「十分な適応、部分的適応、不適応」があるが、適応状態の高さは、その後の『定住・永住意図』を促進し、さらに高い定住意図は「沖縄へのアイデンティティ、移住の薦め」など『移住地へのコミットメント』を促進させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、研究代表者が大学を異動したため、大幅に研究環境が変わってしまった。特に研究の主たるフィールドである沖縄を離れたため、追加調査の実施や新しい情報の入手が困難となってしまった。また大学の業務がひと段落する年度末の3月上旬に集中的な調査を企画していたが、新型コロナの影響を受け、沖縄への渡航およびインタビューの中止を判断せざるを得なかった。 さらに研究分担者についても、12月より産休に入ったため、それまでの妊娠期間とあわせて、十分な研究時間を確保することができず、討議による研究の深化をはかっていくことができなかった。 以上のような状況的変化、ライフイベントの変化が生じたため、新たな調査が実施できず、調査計画の進捗状況としては遅れ気味となった。ただし、過去の科研費で収集したデータも補足的に加えながら、時間を要する質的分析に労力を充当し、分析を拡充できたため、研究それ自体は進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に実施できなかった追加分のインタビュー調査、および全国規模の量的なWeb調査を実施する。一連の調査を通じて、移住における地域選択要因の解明を行う。 ただし全国調査に関して言えば、新型コロナにより人々の移動パターンが変化するとともに、「新しい生活様式」と呼ばれるようにライフスタイルそのものが変化していっている。移住という現象がライフスタイルと密接に関連することを考えると、移住パターンや移住者の心理にも、新型コロナが強く影響している可能性がある。この場合、調査結果がアフターコロナにおける移住を考える資料になると考えられる一方、新型コロナによるバイアスのかかった特殊な一過性のデータとなり、移住の一般的傾向とはかけ離れたものになる可能性も否定できない。調査としてどの時点で実施するのが妥当であるかについて、経緯を推察しながら判断していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の研究機関の異動により、主たる研究フィールドを離れることになった。そのため追加調査の実施が困難となった。また3月上旬に予定していた調査も新型コロナの影響により中止せざるを得なかった。また研究分担者についても、12月より産休に入ったため、研究費を執行できなかった。以上のような状況的変化、ライフイベントの変化が生じたため、新たな調査が実施できず、次年度使用額が生じてしまった。 次年度は、追加のインタビュー調査を実施するとともに、全国規模のWeb調査を実施する予定であり、その調査費用として研究費を執行する。
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