研究実績の概要 |
日本、韓国、台湾、フランス、英国において実施した省略三段論法の受容の文化差(高コンテクスト文化において受け入れられやすい)を検討した研究は、本プロジェクトの中核だが、現時点で論文は学術誌に投稿されてはいるがまだ審査中である。省略三段論法の受容についての文化差は見られなかったが、相手が知っているものを省略しても良いかどうかについては、日本、韓国、フランスにおいて許容されやすかった。これは、言語における省略の影響と推察され、高コンテクスト文化のコードスイッチングである。コードスイッチングとは、情報の受け手がどの程度コンテクストを共有度に応じてのスイッチである。これについて、Wu, Yama, & Zakaria (2023)の研究でさらに明らかにされている。この研究では、中国人と日本人が互いに相手を低コンテクスト文化スタイルとみなしており、この理由は、両国民とも相手国民に対して、自分の国のコンテクストが共有されていないとして、低コンテクストスタイルで話しているからであると、推定された。さらに、この研究は、低コンテクスト文化は、異文化コミュニケーションによって生ずるとされる理論(Gudykunst, 1991など)の検証にもなっている。 このほか、Frointiers in Psychologyにおいて"The role of culture in human thinking and reasoning"という特集の編集を行った。また、学術誌の「認知科学」の論文において、熟慮は直感をどのようにしてどの程度制御できるかについても論じた。さらに、Bence Bagoを中心に多くの国々からデータを収集した義務論的・功利的推論に基づくモラルジレンマ研究が、Nature Human Bhaviourから出版された。この推論は基本的に文化普遍的だった。
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