研究実績の概要 |
日本、韓国、台湾、フランス、英国において実施した省略三段論法の受容の文化差(高コンテクスト文化において受け入れられやすい)を検討した研究は、学会において報告されたが(認知心理学会第21回大会における発表賞受賞)、現時点で論文は学術誌に投稿されていない。本成果は、相手が知っているものを省略しても良いかどうかについては、日本、韓国、フランスにおいて敏感だった。これは、言語における省略の影響と推察され、高コンテクスト文化のコードスイッチングである。コードスイッチングとは、情報の受け手がどの程度コンテクストを共有度に応じてのスイッチである (Wu, Yama, & Zakaria, 2023)。このほか、バウムテストの日仏比較研究も行われた(Sado et al., 2024)。 本プロジェクトのもう一本の軸である、直感的システムと内省的システムを想定した二重過程理論について、理論的発展があった。内省的システムが直感的システムをどのように制御しているのかは、二重過程理論が投げかける大きな問題の1つだが、Yama (2023)は、暴力・残虐性が低下し、人権意識が高まった時期を材料として歴史的自然実験としてこの制御を検証した。結論として、ナラティヴによる共感の役割が強調された。共感が、弱者に注がれると恐怖等による残虐行為が抑制される。しかし、共感の情動的エネルギーは直感的システムの産物であり、その適用の狭さも指摘された。共感は、他者避難に用いられる場合もある(Yamamoto et al., 2023)。
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