研究課題/領域番号 |
18K03020
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
野田 理世 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (90425140)
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研究分担者 |
田邊 宏樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (20414021)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 価値判断 / 予測 / 文脈情報 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,利得(もしくは損失)が連続して与えられる文脈情報が,価値判断,及び予測に与える影響について,脳活動データと行動データを統合して明らかにすることである。人間にとって,様々な変化への適応は重要であり,人々は変化する文脈情報に対して,ユニークな反応を示す可能性がある。これまで,その根本的な脳のメカニズムを検討した研究は殆どみられなかった。増減する文脈情報と,それに対する判断や予測に関わる脳活動の解明は,判断や予測の裏付ける貴重なデータとなり,様々な社会場面での行動予測に大きく貢献できる。本研究では,その根本的な脳のメカニズムの解明を目的として,機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging; fMRI)を用いて脳活動を撮像した実験を実施した。 2020年度は, fMRI実験で得られた脳活動データと行動データの解析結果をまとめて学術論文に執筆した。また,認知実験の結果の一部を国際学会で発表した。行動データを解析した結果については,仮説と,概ね一致した結果が得られた。一方で,脳活動データを解析した結果については,一部仮説通りの結果が得られなかった。特に利得が連続して与えられた場合の脳活動データの解釈を進める上で,新たな研究知見が必要であった。そのため,再度,利得に関わる先行研究をレビューし,再解析を行い,その結果を学術論文にまとめた。 また,利得(もしくは損失)が連続して与えられる文脈情報が,予測に与える影響を検討する実験計画を実施する上で,有益な研究知見を得ることを目的として,認知実験で得られた結果の一部を国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は,利得(もしくは損失)が連続で与えられる文脈情報が,価値判断に及ぼす影響を明らかにするために実施したfMRI実験で得られた脳活動データと行動データの解析結果をまとめ,学術論文を執筆した。 実験で得られた行動データについては,2019年度に解析を終え,その解釈を行った。2020年度は,この行動データの結果の解釈を進める上で,新たな研究視点を得ることを目的として,国際学会で研究発表することを予定していた。しかし,新型コロナウィルス感染症がまん延する中,発表予定の学会の開催が延期や中止となった。もしくは,一部の学会は開催されたものの,その形式がオンライン形式に変更されたため,当初予定していた対面形式で開催される学会を通して得られる研究交流の機会が減じられたため,有益な学術的情報を得ることが困難となった。 実験で得らえた脳活動データについては,脳画像データに,MATLABソフトを用いて解析に必要な処理を加え,再度解析を行った。データを解釈するため,再度,先行研究のレビューを行い,その結果を学術論文に執筆した。利得が与えられる条件と損失が与えられる条件を,それぞれ統制条件と比較した解析を行った結果,利得条件では,異なる条件下で活動する脳部位に差異がみられたため,その解釈を行った。 また,行動データと脳活動データを統合して解釈する際,及び,連続する利得(損失)情報と予測の関係を明らかにすることを目的とした実験計画を立案する際に,有益な研究知見を得るために,認知実験の結果,及びfMRI実験の結果を国際学会で発表する予定であった。しかし,世界的に新型コロナウィルス感染症がまん延する中,多くの国際学会が中止や延期,もしくはオンライン形式での開催を余儀なくされ,スムーズな情報交換,研究知見交換の機会が減じられ,研究の円滑に進める上でのアイデア入手の機会が減じられた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,脳活動データと行動データを解析した結果をまとめて執筆した学術論文を投稿する。それと同時に,2022年度に実施する,利得(もしくは損失)が連続で与えられる文脈情報が予測に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした実験計画を立てる。 まず,解析を行った脳活動データ,及び行動データをまとめて,執筆した学術論文を投稿する。 それと並行して,2021年度に実施する,利得(もしくは損失)が連続して与えられる文脈情報が,予測に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした実験計画を立てる。連続する利得(もしくは損失)情報が与えられた場合,予測については,被験者によって多様なパタンを予測する問題点が明らかとなっている。また,利得が連続して与えれた場合には,条件によって活動する脳部位が異なること,及び,損失が連続して与えられた場合には,条件によって大きな差異がみられないため,連続する数値情報として判断時の実験で用いられたものと同様の情報を用いるのが妥当かどうかという問題点が浮き上がっている。また,従属変数である予測の指標として,使用する変数を検討中である。このような研究計画に伴う課題を解決すること,及び研究を遂行する上で有益な研究知見と得ることを目的として,fMRI実験の解析結果を国際学会で発表する予定である。 また,実際に実験を遂行する場合は,実験参加者への協力が必然となる。新型コロナウィルス感染症がまん延する状況下では,様々な制約が予測されるため,具体的な対策を講じることが求められ,それら対策案を思案することが必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は,脳活動データの解析モデルに変更を加え,再解析した結果を学術大会で発表する予定であった。しかし,新型コロナウィルス感染症がまん延する中,国内,及び国際学会で対面形式での研究発表を行ことが困難となり,オンライン形式での学会発表へと変更を余儀なくされた。オンライン形式での学会発表では,研究者間の交流については,深い学術的議論を進める際,様々な制約があった。そのため,研究計画を立案するにあたって,有益な学術コメントが得られる機会が十分とはいえなかった。そのような問題があったため,2020年度に学術大会で成果発表する予定であった解析結果の一部の内容を,可能な限り2021年度に開催される学術大会で,対面形式で成果発表する予定である。そのため,成果発表に関わる必要経費として,助成金の申請を行った。 また,2020年度は,利得(もしくは損失)が連続で与えられる文脈情報と予測の関係を明らかにする認知実験を実施する予定であった。しかし,この認知実験についても,新型コロナウィルス感染症がまん延する状況下では,実験参加者に実際に実験室に来室してもらい,課題遂行を求める認知実験の実施が困難であった。2021年度は,実際に認知実験をどのように行うのか,その時の状況を踏まえ,実験方法を模索しながら,可能な形で認知実験を遂行する予定である。そのための経費が必要なため,助成金の申請を行った。
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