研究課題/領域番号 |
18K03022
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
土田 昭司 関西大学, 社会安全学部, 教授 (90197707)
|
研究分担者 |
河野 和宏 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60581238)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 災害時パニック行動 / タイ王国 / バーチャルリアリティ / 実験室心理実験 / 大学生 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本や欧米においては発生した事例がないとされている災害時の住民パニック行動が中国においては発生する可能性があるかを確認して、中国において発生するとすればそれを生じさせる要因を解明することを目的とした。しかしながら、コロナ禍により、当初計画した中国での災害時行動心理実験が実施できなかったので2022年度に日本人の入出国が可能である東南アジアのタイにおいて当初計画していたバーチャルリアリティ(VR)を用いた災害時行動についての実験室心理実験を実施することに計画を変更した。その成果は中国における現象の解明にも寄与すると考えられた。 タイ北部はこれまでに大きな地震が発生してきており中国の状況に近いが、タイ北部に位置するチェンマイ大学建築学部の協力を得て2023年8・9月に同大学生と大学院生(144名、内有効協力者数135名:男性49名,女性84名,不明2名)を対象にVRを用いた災害時行動についての実験室心理実験を実施した。実験ではビルの3階において地震とそれに伴う火災が発生し有効な避難路が塞がれた状況をVRによって体験した。なお、VRでは向かいのビルから人が飛び降りるのが見えた。実験では、3名が同時に同一のVR空間に入るマルチプレイ条件と1名が単独でVR空間に入るシングルプレイ条件を設定した。本実験では3階の窓から飛び降りることをパニック行動と定義したが、マルチプレイ条件では約半数(48.8%)の参加者が窓から飛び降りたのに対して、シングルプレイ条件では約1/4(24.1%)であり有意差が認められた。これは、3名の集団状況においては集団浅慮であるリスキーシフトが生じたためであると解釈された。この他にも実験の前後に計149項目の質問への回答を求めた。なお、研究期間終了後の2024年度に対照とするため日本の大学生を対象とした同様の実験を行っている。
|
備考 |
チェンマイ大学(タイ)において実施したバーチャルリアリティを用いた災害行動実験結果と国際比較するために、2024年5・6月に日本において同様の実験を実施する。タイと日本における実験結果を取りまとめて、2024年12月に米国にて開催されるThe Society for Risk Analysis年次大会において発表するのと共に、国際誌への投稿を予定している。
|