研究課題/領域番号 |
18K03023
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
島田 拓司 天理大学, 国際学部, 教授 (70269504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 制御焦点 / 制御適合 / プライミング / 説明効果 / 日米比較 / 関与度 |
研究実績の概要 |
本研究では、制御焦点理論および制御適合理論を援用して、説明(弁明)効果の解明をめざしている。そのために合計4つの研究を実施する計画で、2019年度は研究1の分析と研究2を実施した。研究1では、個人特性としての制御焦点傾向(促進焦点-予防焦点)が、説明に与える効果について検討したが、研究2では、実験的操作(プライミング)によって一時的に活性化させた促進焦点、予防焦点が説明効果に与える影響を検証した。 説得メッセージの提示方法(利得フレーム-損失フレーム)が、聞き手の目標志向性(制御焦点)に合致すれば、聞き手はメッセージを受容しやすくなるという制御適合効果に関する先行研究を踏まえ、説明(弁明)コミュニケーションにおいても同様な効果が見込めるかを日米間社会人を対象に検証した。 研究1では、文化差が示され、日本人は米国人よりも予防焦点傾向が強く、利得フレームよりも損失フレームによる説明の方が受容されやすく、米国人は日本人よりも促進焦点傾向が強く、損失フレームよりも利得フレームによる説明のほうが効果的であることを示唆した。しかし、個人特性として制御焦点傾向と説明フレームによる制御適合効果は示唆されなった。 個人特性ではなく、プライミングによって活性化させた制御焦点を利用した研究2では、聞き手のメッセージへの関与度と制御適合のメカニズムとして提案されている反事実思考についても検証した。その結果、低関与条件では、制御焦点とメッセージフレームによる制御適合効果は、日米ともに確認できたが、高関与条件では、その効果が減じられることを示唆した。制御適合効果をもたらすメカニズムとしての反事実思考については、could反事実思考が媒介変数として関与している可能性を示唆した。この結果を踏まえ、研究3では、複数の説明状況を設定して検証することで、説明に関する制御適合効果のメカニズムを明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は勤務先における業務負担増と人事異動という不測の事態が生じたことにより、研究が遅れてしまったが、2019年度は、周囲の状況も落ち着き、想定していた研究2を終えることができた。また、研究2では、個人特性ではなく、実験的操作(プライミング)によって一時的に発生させた促進焦点、予防焦点が説明効果に与える影響を調査した。また、研究3で扱うはずだった関与度(その説明によってどの程度影響を受けるか)も研究2に組み込んで研究を進めたため、これまでの遅れはかなり挽回できたと考えている。 しかし、2019年度末より、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、3月に参加予定だった学会がキャンセルになったり、対面授業に代わってオンライン授業が開始されることとなり、その対応に時間が取られるなどして、今後の研究活動にはやや不安が残る。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、勤務先の授業形態が、通常の対面授業から、オンライン授業に切り替わった。そのための準備に予想以上に時間がかかり、3月中旬から研究時間がほとんど確保できていない。現状では、授業準備および学生への対応に80%以上の時間が取られており、この状況が続けば、2020年度の春学期が終了するまでは、ほとんど研究に時間が取れない可能性すらある。 このような状況なので、2020年度8月に研究3を行い、2021年度の初め頃に研究4ができればと考えているが、秋以降もオンライン授業が継続することになると、2021年度初頭までに研究4を実施できるかどうかは分からない。また、発表を計画していた学会が中止あるいは延期となったことにより、コロナ騒動が収束しないと、計画にめどが立ちにくい状況である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2-3月に学会への出張を複数予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となり、学会出張にかかる交通費の支出がなかったため。
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