本研究の目的は、聞き手にとって不都合な知らせを伝える場合、制御焦点傾向(促進焦点ー予防焦点)と望ましいメッセージフレーム(利得フレーム/損失フレーム)が合致すれば、聞き手が受けるネガティブな影響が緩和されるとする制御適合効果が生じるかを検証することである。その際、重大さ(不都合な知らせが聞き手に与えるインパクト)、関与度(説明対象の事象にどの程度聞き手が関わっているか)、および文化差(所属文化で好まれる制御焦点傾向)が制御適合効果に与える影響を検証する。2020年、2021年度に実施した研究1と研究2の結果から、聞き手の制御焦点傾向と選好される説明フレームが合致すれば、適合効果が生じることを示唆した。特に低関与条件のほうが高関与条件よりも適合効果が生じやすく、前者では「流暢さ」、後者では「Could反事実思考」が媒介していることを示した。
これらの研究結果を踏まえて、研究3では、不都合な程度が弱い状況シナリオを使用して同様の結果を得られるかどうかを検証した。その結果、聞き手の関与度が強い(その事象によって直接影響を受ける)場合に「流暢さ」が媒介しており、弱い(直接影響を受けない)場合には「流暢さ」も「反事実思考」も媒介していないことが示された。すなわち、それが知らせの不都合さであれ、聞き手の関与度であれ、聞き手に与える影響が弱い場合には、「流暢さ」が媒介するが、強い場合には「Could反事実思考」が適合効果を生じさせる原因である可能性を示唆されたことになる。2022年度に実施した研究4では、この結果が実験操作による制御焦点傾向とメッセージフレームによって生じた制御適合でも、関与度が弱い場合には「流暢さ」、関与度が強い場合には「反事実思考」が媒介しているかを検討した。データ収集は終え、早急にデータ処理を行う予定である。
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