研究課題/領域番号 |
18K03024
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
岩佐 和典 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (00610031)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 行動免疫 / 感性的質感 / 嫌悪 |
研究実績の概要 |
視覚的な湿り気知覚に伴う生理的変化の検討を目的とした,画像刺激に対する瞳孔径の変化を測定する実験が進行中である。まだ予定数に達していないため未解析の段階ではあるが,先行研究(Iwasa et al., 2021)で示された視覚的湿り気知覚と嫌悪の関係を,生理的反応のレベルで再検討することが可能だと期待される。これと並行して,行動免疫の鍵感情である嫌悪の概念的検討を行った。3領域嫌悪尺度日本語版の尺度項目を読んだ際の主観的経験を感情オノマトペによって報告させ,コレスポンデンス分析によって解析した。その結果,中核嫌悪,性嫌悪,道徳性嫌悪といった嫌悪の下位概念に応じて,主観的経験の様相が異なる可能性が示された。具体的には,不快感や悪寒のような典型的な嫌悪反応を表すオノマトペは中核嫌悪の尺度項目と近接し,道徳性嫌悪や性嫌悪の尺度項目には,むしろ高覚醒状態を表すオノマトペが近接していた。従来,嫌悪は機能的に連続する複数の下位概念から構成されるものと考えられてきたが,ここで明らかになった主観的経験の違いは,必ずしもそれらが同一の感情状態とは言えないことを示している。行動免疫による汚染源の視覚的検出には,特に中核嫌悪の誘発過程が関与していると考えられるため,今後は中核嫌悪にフォーカスした検討を行うことが有益だと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウィルス感染症流行の影響により,対面実験を行うことが難しく,予定した実験参加者数を達成することができなかった。本研究では色情報を高度に調節可能なディスプレイを実験に用いる必要があり,実験環境を統制できないオンライン実験では代替できないと判断した。そこで,関連する実行可能な研究課題として嫌悪の概念的検討を行うなど,対応を工夫してきた。それによって研究全体としては進展がみられたが,当初の計画には明らかな遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
感染症の流行状況を見つつ,現在行っている実験を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の流行に伴い,対面実験が困難となり,実験参加者数が目標数に到達しなかったため,研究成果発表のための予算を消化できなかった。
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