研究課題
基盤研究(C)
視覚的な湿り気知覚の心理物理的基盤と嫌悪反応との関係を,行動免疫理論の観点から検討する実験を行った。実験の基本的な手続きは,水分量を段階的に操作した有機物の画像を視覚呈示し,濡れ感の強さや種々の嫌悪反応の評定を求めるというものだった。実験の結果,濡れ感の評定は刺激の水分量と線形の関係あり,ヒトは視覚によって対象の水分量をある程度正確に相対評価できることが示された。さらに,そうした視覚的な推定は画像上の高輝度領域数や空間周波数成分といった画像統計量によって予測可能だった。
実験心理学
この研究では,視覚的な湿り気知覚という日常的な知覚経験を分析し,その心理物理学的基盤を明らかにした点で,基礎研究としての価値を有している。また,嫌悪反応を検討に加えたことにより,感情心理学的な文脈からも新奇な知見を得ることができた。水分を含む有機物ではしばしば雑菌が繁殖するため,腐敗等の状態によっては,接触を通じた感染症リスクが存在する。本研究の知見は,視覚による湿り気知覚のメカニズムの一端を示したものであり,いかにしてヒトが接触せずに感染リスクを回避しているかを理解するてがかりとなった。