本研究では、文化の継承を単なる過去の文化のコピーではないと考えている。マクロな観点から見れば文化は同形の複写に見えようとも、ミクロな視点から見ればその時代を生きる者たちがその都度文化を生成しているのである。つまり,文化の継承とは、過去から受け継がれた文化の「かたち」の中で、新たな状況に対応するために,葛藤しつつも自分たちのかたちに作り直して後世へと伝えていく歴史的な営みなのである。本研究は,文化の継承と変容を、①微視発生を通して次世代につなぐ縦のプロセスと、②同時代を生きる者同士でなされる議論・合意形成・納得という横のプロセスという二重の過程から解明しようと試みた点にある。
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