研究課題/領域番号 |
18K03028
|
研究機関 | 公益財団法人大原記念労働科学研究所 |
研究代表者 |
余村 朋樹 公益財団法人大原記念労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (80390772)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 安全文化 / 向上活動 / 阻害要因 / 組織要員 / 職位 / 産業組織 / アクション・リサーチ / 組織間 |
研究実績の概要 |
研究代表者らが開発を行ってきた安全文化評価・向上プログラムは,質問紙法と面接調査法を用いて産業組織の安全文化上の課題を明らかにし,対策活動計画の策定を支援する(対策ディスカッション)。続いて定期的に対策活動の進捗状況を確認し,必要に応じて活動計画の修正の助言を行う(モニタリング調査)。さらに,再度質問紙と面接調査を実施し,活動の効果の測定と残された課題の把握を行う。本研究課題は,このプログラムにおいて,安全文化向上のために立案・計画された活動を阻害する種々の要因を探索し,それら阻害要因と当該組織の安全文化がどのような関係になっているかをアクション・リサーチ型の研究によって明らかにすることを目的としている。 本年度は,前年度の事前質問紙調査と事前面接調査で具体的に抽出された対象組織の安全文化上の脆弱点に対し,対策ディスカッションとモニタリング調査を行った。予定よりも多くの部署を同時に対象とすることになったため,多くの部署に共通の課題と,各部署個別の課題とに分け,共通の課題に関しては全体を管理している部署が主に対応することにした。各課題への対策はそれぞれの部署の現状や条件を考慮しながら策定された。研究者らは,産業組織心理学的見地から,活動の実現性や効果がより高くなるよう,内容,方法について助言した。 モニタリング調査は調査対象の各部署に対して,活動内容と状況の報告を受けた上で,管理者から作業者,協力会社の方までを対象に面接調査法を用いて実施した。また,各オフィスならびに作業現場にも赴き,実際の作業環境境や作業方法,対策活動の例を確認しながら調査委を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,前年度に事前質問紙調査と事前面接調査の双方を実施し,多くのデータを得られた組織間構造を持つ集団組織体に対して,引き続き対策ディスカッションとモニタリング調査を実施することが出来た。モニタリング調査は各部署ともに2度ずつ実施し,調査は概ね計画通り遂行出来ている。 今回は各部署において対策の実行主体をワーキンググループとして明確に構成せず,各部署の管理者の採る方法に任せて実施した。 本調査は調査対象組織の長期に亘る継続的な協力が必要である。しかし,長期に亘り綿密な協力が必要であるが故に,研究期間中に状況の変化等により協力が得られなくなる可能性も十分に考えられる。そのため,可能な範囲で出来るだけ多くの組織に対して並行して調査を実施しておくことが望ましい。しかしながら,今年度は新たな事前質問紙調査・面接調査を行うことは出来なかった。
|
今後の研究の推進方策 |
計画では,モニタリング調査1回と,事後質問紙調査を行う予定である。 モニタリング調査では,引き続き実行されている対策の進捗確認を行う。計画からの遅れや部署のメンバーからの不満などが認められた場合は,その原因(阻害要因)を面接調査や資料等の調査によって明らかにする。さらにその結果に基づき,阻害要因の解消策の検討・実施を促す。 対策がひと段落したところで,事後質問紙調査を行う。しかし,対策の実施や阻害要因の分析・解決が困難な場合は,モニタリング調査もしくは事後質問紙調査の実施時期を調整する。 但し,本年度は感染症の状況によって,調査対象組織を訪問することが困難であることが予想される。時機の見極めや,電話,メール,webミーティングツールなどの活用を積極的に行う必要がある。 さらに,調査対象組織の活動そのものが感染症によって大きな制限を受けており,本研究プロジェクトへの協力にも影響が出る可能性が高い。実際の産業組織における調査研究であるため,影響を受けるのは止むを得ないため,少しでも協力が得られるよう,現在の調査対象組織と交渉を続けるとともに,引き続き調査協力が得られる他の組織を探し,可能な範囲で調査を行う必要がある。
|