研究課題/領域番号 |
18K03029
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
茂呂 雄二 筑波大学, 人間系(副学長), 教授 (50157939)
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研究分担者 |
岸 磨貴子 明治大学, 国際日本学部, 専任准教授 (80581686)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貧困と格差 / 公共空間 / アクションリサーチ / パフォーマンス心理学 / 社会関係資本 / 再配分 |
研究実績の概要 |
本研究で取り組むプロジェクト(以下、本プロジェクト)は、貧困や格差を背景とする子ども・若者の私的空間から公共空間への移行困難と、この困難がもたらす社会情動スキルの未発達問題に挑戦する、教育心理学的なアクションリサーチである。貧困に起因した様々なリスクをかかえる子ども・若者を対象に、家庭とも学校とも異なる社会文化的な経験を付与する学習機会を、パフォーマンス心理学にもとづいて、探索的に組織化するものである。本プロジェクトが構築を目指す社会技術としての第3空間は、社会関係資本に乏しい貧困の子ども・若者に対して、ボランティアの大人(子ども達の身近なヒーロー)が社会文化的資本を再配分する介入的な仕組みである。具体的には、子どもの地域コミュニティへの貢献(地域でのお手伝い等)を地域通貨『ヒーローコイン』に交換し、これを原資にして一緒に活動してみたいヒーローとともに学習・研修する仕組みを社会技術として実装する。この実践を理論的に意味づけながら具体的な仕組みを検討し、実装可能なモデルを提案する。 本年度は、理論的研究を中心に検討を重ねた。特に、本プロジェクトでは、私空間と公共空間の適切な往還が子ども・若者の社会情動的スキルの発達を促すとの仮説に立って、この往還を可能にする橋渡し空間(公/私空間の“間”となる第3空間)を学習空間として組織し実装することを目指すために、子ども等を取り囲む、私的空間と公共空間の布置を明らかにする、社会物質的アレンジメントの記述方法を中心に検討を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
子ども等を取り囲む、私的空間と公共空間の布置を明らかにする、社会物質的アレンジメントの記述方法に関しては、欧米においても十分な理論研究の蓄積がない状況である。そこで、方法論に関する理論的研究を進めている。その成果は海外学術誌に投稿すべく準備が進んでいる。内容的にも、新たな視点から多種多様なステークホルダーのネットワークを記述するものであり従来の議論を発展させるものとなっている。このことからおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のコロナ禍の状況では、経験的なデータの収集に関して、特に子どもたちに対する対面での調査などがこれまで通りには進められない状況である。そこで、以下のような戦略で研究を実施している。①遠隔での調査方法を工夫してオンラインでのイベントの中で情報収集する、②子どもそのものを調査対象とできない場合には、子どもを取り囲むステークホルダーの大人や関係機関職員から間接的に情報収集する、③理論的議論ならびに方法論的議論を先行して研究を展開するとの戦略でできる限り研究を進展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度については、新型コロナウィルスのために、予定していた海外での成果発表などができずに、また国内での学会参加などもできないために次年度使用額が生じた。次年度の使用計画としては、現在のコロナの状況からすると、旅費の使用は見込めない状況である。そのために、これまで得た資料の整理のための謝金と、英文論文執筆のための英文校閲費用にこれらの旅費分を当てることで、確実で有効な研究費使用を目指していく。英文論文は現在修正中であり、確実に成果発表を行う予定である。
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