本研究で取り組むプロジェクト(以下、本プロジェクト)は、貧困や格差を背景とする子ども・若者の私的空間から公共空間への移行困難と、この困難がもたらす社会情動スキルの未発達問題に挑戦する、教育心理学的なアクションリサーチである。貧困に起因した様々なリスクをかかえる子ども・若者を対象に、家庭とも学校とも異なる社会文化的な経験を付与する学習機会を、パフォーマンス心理学にもとづいて、探索的に組織化するものである。本プロジェクトが構築を目指す社会技術としての第3空間は、社会関係資本に乏しい貧困の子ども・若者に対して、ボランティアの大人(子ども達の身近なヒーロー)が社会文化的資本を再配分する介入的な仕組みである。具体的には、子どもの地域コミュニティへの貢献(地域でのお手伝い等)を地域通貨『ヒーローコイン』に交換し、これを原資にして一緒に活動してみたいヒーローとともに学習・研修する仕組みを社会技術として実装する。この実践を理論的に意味づけながら具体的な仕組みを検討し、実装可能なモデルを提案する。 本年度は、理論的研究を中心に検討を重ねた。特に子供・若者の私的空間から公的な空間への橋渡しを支援する、ソーシャルセラピューティクスの「わざ」の本質を明らかにした。
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