研究課題
基盤研究(C)
痛みに対する医学的コントロールの効果について,その判断には幼児から大人まで発達差がそれほど見られないが,非科学的コントロールの効果についての判断は小中学生と比較して幼児や大人がより高く見積もるU字型の発達傾向が,心理的コントロールについては幼児や小中学生より大人が高く見積もる傾向が示された。痛みの諸表現の発達については,非言語的表現は1歳から主要な痛み表現であり続けるが,痛いとの言語表現は1歳前半から出現し, 2歳後半以降,主要な痛み表現の1つとなることが示された。痛む部位に関する言語表現は1歳前半では皆無だが,2歳後半まで増加し続け,その後は変化が少ないことが示された。
発達心理学
本研究の学術的意義は,これまで十分に明らかにされていなかった幼児期から大人までの痛みの因果理解の生涯発達過程,痛みに関する表現の発達過程の解明につながる知見を示したことに加え,近年,注目されている科学的理解と非科学的理解の関係性(e.g., 外山,2015)を解明するうえでも重要な知見を示した点にある。本研究の社会的意義は,これらの知見が小児医療や学校保健現場での子どもの痛みに関する表現や理解の支援のあり方を考える上での基盤になる点である。