研究成果の概要 |
本研究の目的は、社会における人間の意思決定能力である善悪判断の心理学的メカニズムを解明し、効果的な支援方法を開発することであった。発達障害についてのハンドブックにおいて、「Cognitive, Emotional, and Moral Decision Making in Adolescents and Adults with ASD.」という章を単著で執筆し、自閉スペクトラム症児者の意思決定や善悪判断について展望した。心理学評論誌において、「こころの多様な現象としての共感性」という展望論文を執筆し、自閉スペクトラム症、アレキシサイミア、サイコパシーそれぞれの共感の問題について考察を行った。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
善悪の判断は、歴史的に、哲学、経済学の分野で議論されてきた問題である。アダム・スミスは、「道徳感情論」の中で、道徳感情である利他心と、人間の利己心について議論をしている。道徳判断の研究は、人間の意思決定や発達過程を明らかにする心理学的実験手法 (ブルーム, 2015; 唐沢, 2013)、脳の機能や構造を検討する脳科学的手法を用いて解明する試みがなされている (Decety & Wheatley, 2015; 金井, 2013)。したがって、善悪判断の研究分野は、善悪といった価値の判断についての哲学的側面と、人間の行動原理を解明する科学的側面の両方が必要な学際的な検討課題である。
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