研究課題
本研究の目的は、まず第一に、日本で生まれアメリカ合衆国に移住した日本人や日系アメリカ人、日本で生誕し中国(台湾)に移住した日本人や日系中国人(日系台湾人)、日本で生まれ生活する日本人に半構造化面接を実施し、データの質的分析から、子-成人-老親の世代間支援とウエルネスの関連を分析することである。また、アメリカ合衆国や中国(台湾)に移住した日本人と日本在住の成人の比較により、国際移動と世代間支援やウエルネスとの相互作用を明らかにすることである。2019年度は、アメリカ合衆国へ移住した日本人、日系アメリカ人に対する半構造化面接を、2018年度から継続し、アメリカ調査の当初予定人数に達した。また、中国(台湾)に移住した日本人、日系中国人(日系台湾人)に対する半構造化面接を開始した。さらに、研究成果は国際学会で発表したり、海外研究協力者のWinston Tseng教授 (カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生学部)を招き、日本で「アメリカ合衆国と日本における国際介護とウエルネス」と題する国際シンポジウムを主催した。これらの研究成果は、大阪大学大学院医学系研究科のホームページで公開している。2020年度は、まず第一に、中国(台湾)で面接対象者への面接を継続し、第二に、日本で生まれ生活する日本人に対して、面接調査を開始する予定であった。第三に、アメリカ合衆国に移住した日本人・日系人、中国(台湾)に移住した日本人・日系人、日本在住の日本人について、国際比較を行い、国際移動、世代間支援、ウエルネスの相互作用を分析し、国際学会誌や国際学会で発表するとともに、Winston Tseng教授を招聘して、高齢者介護とウエルネスに関する国際シンポジウムを開催することが計画された。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中国(台湾)と日本での調査が困難でとなり、国際シンポジウムも延期となった。
3: やや遅れている
2020年度は、中国(台湾)の日本人・日系人支援センターの代表責任者等から紹介された、面接対象者への半構造化面接を継続し、中国(台湾)で面接を再開して、研究計画に見合う面接対象者数に達するまでインタビューを実施することが予定された。また、日本で生まれ生活する日本人については、日本の国際交流機関等に協力を依頼して面接対象者を募集し、研究協力の同意が得られた面接対象者に対して、半構造化面接を実施することが計画された。さらに、インタビュー・データの質的分析を行って、3か国の国際比較について、国際学会誌や国際学会で発表することが予定された。合わせて、海外研究協力者のWinston Tseng教授を日本に招き、国際シンポジウムが計画された。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、海外渡航が困難となり、中国(台湾)を再訪し、中国(台湾)在住の日本人や日系中国人(日系台湾人)に対して、対面して個別面接を行うことが困難となった。また、日本でも新型コロナウイルスの感染拡大が持続し、日本に生まれ育った日本人成人に対する、対面での半構造化面接が極めて難しい状況となった。さらに、日米の海外渡航制限に伴って、海外研究協力者のWinston Tseng教授をアメリカ合衆国から日本へ招くことが厳しい状況となり、研究成果公開のひとつとして計画されていた国際シンポジウムも延期となった。しかし、所属機関の研究倫理審査委員会に研究方法の変更を申請した結果、承認が得られたため、2021年度は非対面での面接が可能となる。2021年度は、当初の研究計画の通り中国(台湾)及び日本での面接の実施、データの国際比較ならびに、国際シンポジウムを行う見通しである。また、国際シンポジウムでの討論を基盤に、国際学会・国際学会誌等での発表も総合して、最終的な研究成果報告書にまとめることを目指す。
2020年度は、新型コロナウイルスの影響で、中国(台湾)と日本での半構造化面接が困難になったり、海外研究協力者のWinston Tseng教授を招聘しての国際シンポジウムが見送られた。しかし、所属機関の研究倫理審査委員会から研究方法の変更の承認を得られたことから、2021年度は非対面により、中国(台湾)に移住した日本人、日系中国人(日系台湾人)及び、日本で生まれ育った日本人に対して、半構造化面接を進める。また、日米のワクチン接種の進捗や海外渡航制限の緩和に伴って、Winston Tseng教授を招いての国際シンポジウムも実現可能と予測される。さらに、インタビュー・データの質的分析から、国際移動、世代間支援、ウエルネスの相互作用を解明するとともに、アメリカ合衆国、中国(台湾)、日本在住の日本人、日系人を比較し、3グループの共通性と差異性を抽出して、国際学会誌や国際学会で発表する。国際シンポジウムでの議論を基盤にし、国際学会・学会誌での発表を総合して、最終的な研究成果報告書をとりまとめる予定である。特に、家族の世代間支援は老親に介護が必要となったときに、重要な局面に直面する。また、家族が国境を越える場合(他国への移住)、国際介護に関する検討が求められる。国際介護には、国際遠距離介護(他国へ移住した成人が、定期的に帰国して日本で提供する介護)や、国際呼びよせ介護(成人が移住した国に、老親を呼びよせて提供する介護)が含まれる。本研究では、国際遠距離介護と国際呼びよせ介護にも焦点をあてることを通して、家族が国境を越える際、日本人や日系人の家族の世代間支援にどのように影響するとともに、老親に介護を提供する成人のウエルネスにどのように関与するか、これらの相互作用の解明を通して、国際超高齢社会のグローバル介護について、貴重な政策的示唆を提言することができると考えられる。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、2021年度の研究計画の再検討が必要とされた。科学研究費補助金の補助事業期間の延長が承認され、本研究は2022年3月31日まで研究期間が延長されることになった。2022年度の具体的な使用計画については、まず第一に、非対面の半構造化面接を、中国(台湾)に移住した日本人や日系中国人(日系台湾人)に対する面接を実施するため、面接対象者への謝金を必要とする。第二に、日本の国際交流機関等を訪問し、代表や責任者に研究協力を依頼するため、国内旅費も必要とされる。研究協力が得られた後、日本在住の日本人に対する面接を行うことから、面接対象者に対する謝金も必要である。さらに、研究成果公開を目的として、国際学会で発表のための海外旅費や宿泊費も発生する。合わせて、海外研究協力者を招いての国際シンポジウムを主催予定であり、発表資料の準備やデータ分析の補助に際して、研究補助者に対する謝金等が支出される計画である。
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