研究課題/領域番号 |
18K03039
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
中山 留美子 奈良教育大学, 学校教育講座, 准教授 (60555506)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 養育態度・行動 / 自己愛 / 自尊感情 / 全体的自己評価 / メタ分析 |
研究実績の概要 |
聞き取り調査などの実施が困難となっている都合から,本年度は先行研究の知見の整理を行い,その成果に基づく実証的検討を行った。 まず,先行研究の整理は,自己愛と養育態度・行動の関連について行い,理論的な整理とメタ分析による相関係数の統合結果の比較検討をった。オンラインデータベースを用いて文献を検索し、相関係数(r)またはrに変換可能な統計量を報告している43論文(47研究)を収集したところ、自己愛と養育態度・行動の指標はそれぞれ多岐にわたっており、検討に際してまず指標の整理を行なった。自己愛については誇大性と過敏性に大別した上で誇大性をさらにNarcissistic Personality Inventory及びそれ以外の測度に分け、養育態度・行動は温かさ、モニタリング、心理的統制、甘やかし・非一貫、拒否・無関心の5つに分類して検討を行なった。 自己愛の測度の別ごとに養育態度・行動との母相関係数を推定したところ、推定値は最大でも.2程度であり、自己愛や養育態度・行動の性質を考慮した上でも、自己愛の形成に対する養育態度・行動の直接的な影響を強調することはできないと結論づけた。理論的には3種類の仮説が提出されており,それぞれ特定の養育態度・行動による直接の影響が想定されていたが,この結果から、今後、複数の態度・行動の複合的な効果や間接的な効果、子どもが既にもっている自己評価の特徴との相乗的な効果など、養育態度・行動の直接的でない影響について検討していく必要性が示唆された。 実証的検討は,結果に基づき,ベースラインとしての養育態度とストレス経験に対する関わりの組み合わせにより,自己愛や自尊感情などの自己評価に相違が生じるかという点に関して行った。検討の結果,養育態度とストレス時の対応の組み合わせによって,自己愛は高いが自尊感情は低いと言った自己評価の個人差が説明されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により,当初計画していた学校をフィールドとする調査研究が困難となった。そのため,予定を変更し,先行研究の整理や理論的検討を進めた(メタ分析の結果は現在投稿中)。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の成果に基づき,養育者の関わりの直接的でない影響(複数の態度・行動の複合的な効果や間接的な効果、子どもが既にもっている自己評価の特徴との相乗的な効果など)について,いくつかの方向性での検討を行う予定である。 また,2021年度は自己愛に関する文献研究とメタ分析を行ったが,自尊感情に関しても同様の検討を行い,健康的な自己評価の発達に関して,理論的にもより深い理解を得ることを目指す予定である。 2022年度が最終年度であるが,コロナ禍による研究遂行の遅れを考慮し,研究期間を延長して研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が遅れており,国際学会参加の予定を取りやめた。また,国内学会に関しても,オンライン開催となり旅費が不要となったり,予定していた学会への参加を取りやめたりした。 予定していた調査やその成果発表は,次年度以降(期間延長予定)に実施する予定であり,その経費として次年度使用額を充てる予定である。 本年度は,コロナやウクライナ侵攻により海外からの書籍が届かないトラブルも生じた。できるだけ早期に執行し,研究に必要な物品等が揃わない事態に陥らないようにしていきたい。
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