研究課題/領域番号 |
18K03041
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島 健一郎 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20587480)
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研究分担者 |
福井 謙一郎 長崎女子短期大学, その他部局等, 講師(移行) (80767541)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生徒理解 / 共感の正確性 / 批判的思考 / 社会経済的地位 / 対人関係 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度までの研究成果について日本社会心理学会と日本心理学会の年次大会で発表を行った。前者では「一対多」状況での他者理解が正確なのは誰か、という問いのもと、保育者養成校の女子学生113名を対象に実施した、一斉教示・個別回答による集団実験の解析結果について発表した。後者では、この実験における方法論上の問題点を解決するために、目的変数の測定方法をはじめ、複数の改良を施した集団実験の解析結果を発表した。 後者における改良内容のひとつとして、テスト問題を選択式に変えたうえで、各選択肢を選ぶ人数を、選択肢ごとに推測するよう変更した点があげられる。これが目的変数の測定方法の改良にあたる。保育者養成校の女子学生73名を対象に集団実験を行った結果、批判的思考の能力と他者理解の正確さとの間に有意な関連は認められなかった。これは両者の間に正の関連が認められた先の実験とは異なる結果である。そこで他の測定変数を用いた探索的検討に切り替えたところ、他者の理解度を推測する側の女子学生について、推測題材となったテスト問題の成績と他者理解との正確さに正の相関が認められた。言い換えれば、テストで良い成績をあげた女子学生ほど、テスト問題のそれぞれの選択肢を選んだ人数の推測が実際の選択人数と近いことが示された。さらに、ここでの関連は社会経済的地位が高く、日本社会に生活水準を向上する機会があると考えている女子学生においてのみ認められた。 これら2つの実験結果を踏まえ、申請時に予定していた介入研究へと展開するのではなく、「一対多」状況の他者理解の正確さに関する基礎的研究を継続することにした。具体的には、他者理解の正確さと対人関係の指標との関連、そして「一対多」と「一対一」の他者理解の異同に着目した調査研究を実施した。来年度は、このデータの解析結果について学会等で発表を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
集団実験に基づく研究成果を学会大会で発表しただけではなく、追加調査を実施したことから本申請課題は確実に進展していると評価している。しかし、申請時に予定していた研究計画の遂行までは至っておらず、申請時の計画内容から乖離しているのは事実である。加えて、所属大学や研究協力校における新型コロナウィルス対応に伴う研究スケジュールの変更も生じたため、計画変更後の研究が円滑に進んでいるとまでは言えない。以上の点を踏まえて「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
主として次のふたつを計画している。ひとつは他者理解の正確さと対人関係の指標との関連、そして「一対多」と「一対一」の他者理解の異同に着目した調査研究に基づく学会発表である。もうひとつは、研究実績の概要で述べた実験成果に関する直接的追試である。しかし、昨年度までに引き続き新型コロナウィルス対応が求められ、さらにその内容が状況に応じて変わる可能性がある。そのため、オンラインでのデータ収集へと変更することをも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属先と研究協力校の新型コロナウィルス対応に伴う研究計画の変更と研究スケジュールの遅延が生じたこと、加えてこれまでに得られた研究成果と申請当初の研究計画との乖離を踏まえた追加研究を実施したことにより、研究費の執行計画に変更が生じたためである。今年度分の残額は「今後の研究の推進方策」で述べた学会発表費用ならびに関連の研究出張,そして直接的追試研究の参加者謝礼に充てる予定である。
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