研究課題/領域番号 |
18K03049
|
研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
吉田 琢哉 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (70582790)
|
研究分担者 |
吉澤 寛之 岐阜大学, 教育学研究科, 准教授 (70449453)
浅野 良輔 久留米大学, 文学部, 講師 (50711909)
吉田 俊和 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (70131216)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 地域連携 / 社会化 / 保護者 / 地域住民 / 学校運営チームワーク |
研究実績の概要 |
近年の教育政策では学校の地域連携が重視されており,その教育効果について実証的な知見が求められている。本研究は,教師,保護者,地域住民それぞれの働きかけや相互の連携が子どもの健全な成長にいかに資するかを明らかにすることを目的とする。 平成30年度には小中学生とその保護者のデータをもとに,親,教師,友人,地域住民の働きかけが社会的認知バイアスに及ぼす影響過程について検討した。働きかけの指標として親の養育,教師の指導,友人の非行,集合的有能感を,社会的認知バイアスは認知的歪曲と一般攻撃信念により測定した。共分散構造分析に基づく結果から,地域住民の集合的有能感の非公式社会的統制は親の認知する養育,子どもの認知する養育を介して社会的認知バイアスを抑制し,子どもの認知する教師の指導のM機能は社会的認知バイアスを抑制し,友人の非行は社会的認知バイアスを促進するとのモデルの適合性が示された。本研究の知見は,地域連携が推奨される今日の学校において,地域住民に協力を呼びかける上での有益なエビデンスとなることが期待できる。 また,学校教育における地域住民・保護者との連携,すなわち学校運営チームワークを測定する尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検証した。小中学校に通う子どもの保護者を対象にweb調査を実施した。学校運営チームワーク尺度はチーム志向性,チーム・リーダーシップ,チーム・プロセスの3因子が抽出された。保護者集団としての集団同一視,および地域住民と教師に対する信頼との関連から,基準関連妥当性も確認された。本尺度は保護者・地域住民・教師の学校運営における連携を把握することができる初めての尺度であり,チーム・プロセスとして表れる具体的な行動変数や,チーム・リーダーシップとして表れるPTAリーダーに対する認知という観点から,現状で不足しているチームワークの要素を具体的に把握できるとの有用性を持つ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に作成した学校運営チームワーク尺度を基に,地域住民,保護者,教師のチームワークの向上が子どもの社会化の促進に及ぼす影響について検証すべく,現在,小学校での縦断調査について準備を進めている。協力校の内諾はすでに得ており,令和元年度についても当初の計画に沿って研究を遂行できる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
地域連携に関してもう一つ重要となるのが,教師-保護者-地域住民の間での不毛な対立を防ぎ,メンバーの入れ替えや離脱に耐えうる,持続可能な組織の体制づくりである。近年の教育政策においては、保護者・地域住民が学校の運営方針の決定に中核的な役割を担うコミュニティ・スクールの取り組みが小中学校を中心に広がっている。そこで今後は,強固なチームワークを発揮している小中学校の教師,保護者,地域住民を対象に面接調査を実施し,コミュニティ・スクールとしてのチームワークの充実に至る発展プロセスを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた学会での発表を校務との重複から断念したこと,及び当初計画していた面接調査のテープ起こしの委託を翌年度に持ち越したことから,次年度使用額が生じた。次年度は,面接調査から得られた音声データのテープ起こし,調査票の印刷委託,学会発表,研究打合せ旅費,データ整理補助のために助成金を使用する計画である。
|