研究課題/領域番号 |
18K03056
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
西田 裕紀子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年学・社会科学研究センター, 室長 (60393170)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人生における目的 / 中高年者 / エイジング / 学際的縦断研究 / well-being |
研究実績の概要 |
本研究では、身体機能が低下しやすい中年期から高齢期にかけてよりよく歳を重ねるための心理的な資源として「人生における目的(Purpose in life:生きる目標や人生の方向性をもっているという感覚)」に着目し、「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の一貫として、その加齢変化と個人差及び、心身の健康に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。3年目にあたる2020年度には以下の研究を進めた。 1.具体的内容:(1)追跡データ収集:NILS-LSAの追跡調査として、個別面接及び質問紙調査により、人生における目的、身体的健康、心理的健康、健康関連行動、背景因子に関する追跡データを収集した。(2)解析:蓄積済みのデータにより、特に高齢期において「人生における目的」が高い場合、「知的刺激系活動」「創造的活動」等の余暇活動の頻度及び活動の多様性が高く、その後の認知機能低下のリスクが抑制されることが示された。 2.意義・重要性:現在、介護予防事業の一環として「生きがいと健康づくり」等の講座が多く開催されているが、生きがいや生きる目標をもつことが心身の健康に及ぼす効果のメカニズムを検証する学術的な研究はほとんどない。本研究は、「人生における目的」という心理学的な構成概念を用いてそれらを検討することにより、中年期から高齢期にかけて良く歳を重ねるための実証的かつ具体的な心理的方策を提唱することを目指す点で意義あるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究実施計画は、追跡データ収集と「人生における目的」が心身の健康に及ぼす影響について解析を行うことであった。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、追跡データ収集が当初の予定よりも遅れているが、2021年度には完遂できる見込みである。その他の点では、研究計画に沿ったスケジュールで進めることができていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は追跡調査を行い年度末までに約1200名の調査を完了した。2021年度は引き続き調査を遂行し、約1600名の調査を完了する見込みである。またこれらの追跡調査と並行して、「人生における目的」が心身の健康に及ぼす影響のメカニズムについて解析を進めるとともに、積極的な研究成果発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、追跡調査の一部を中止・延期としたため、調査スタッフ雇用のための人件費・謝金の支出が大きく抑えられた。同様に、参加を予定していた国際学会が延期となり、国内学会もウェブ開催となったため、旅費が未使用となった。加えて、計上していた設備備品代(パソコン一式)について、予想されたパソコンの不具合が生じなかったことなどから、その支出が抑えられた。 上述をふまえ、2021年度は追跡調査の遅延を補填するための人件費・謝金、研究成果発表のための旅費及びその他経費(学会参加費、英文校正代等)、物品費(パソコン一式等)として使用する予定である。
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