研究課題/領域番号 |
18K03056
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
西田 裕紀子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 老年学・社会科学研究センター, 副部長 (60393170)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人生における目的 / 中高年者 / エイジング / 学際的縦断研究 |
研究実績の概要 |
「人生における目的(Purpose in life)」は、心理的well-beingの構成要素のひとつであり、「自分がどのような人生を送りたいかを考え、生きる目標を持ち続けている」という特性である。本研究では地域住民を対象とする「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の縦断データ(10年間、4時点)を用いて、「人生における目的」の加齢変化と個人差を明らかにするとともに、「人生における目的」が心身の健康に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。前年度までに、人生における目的、身体的健康、心理的健康、健康関連行動、背景因子の追跡データ(4時点目)を収集した。また、既存データ(3時点)を用いて「人生における目的」得点が高い場合には8年後の死亡リスクが抑制されることを明らかにした。 2022年度には、以下の研究を進めた。(1)10年間、4時点の縦断データベース(N=2289:ベースライン年齢40~89歳)を構築した。(2)(1)を用いて、「人生における目的」得点の加齢変化を検討した結果、40歳から70歳まで緩やかに上昇し、その後少し低下することが示された。また、「人生における目的」得点の個人差は心理的well-beingの他の構成要素よりも大きいことが明らかになった。(3)「人生における目的」得点は、抑うつ、生活満足度などの心理的健康、握力、脚筋力などの身体的健康と関連することが明らかとなった。これらの結果について、日本発達心理学会第34回大会のシンポジウムで発表した。
介護予防事業の一環として「生きがいと健康づくり」の講座が開催されているが、生きる目標をもつことが心身の健康に及ぼす効果を明らかにする学術的な研究はない。本研究は、「人生における目的」という構成概念を用いてそれらを検証する点で意義あるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2000年から2022年にかけて、新型コロナ感染症拡大の影響で調査の中断や延期を余儀なくされたために縦断データベース構築が遅れたことから、解析研究の実施に遅延が生じている。一方、縦断データベース構築後は、当初の計画の流れに沿って縦断解析を進めていることから、研究の進捗を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長した2023年度には、前年度までの解析結果を成果発表するとともに、「人生における目的」と心身の健康を媒介する変数を検討し、目的意識や生きがいをもつことが心身の健康に及ぼす影響について総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の流行蔓延により出張を控えたり、発表を予定していた学会がオンライン開催となったりしたために、当該年度に執行する予定であった研究費に残額が生じた。残額については、データ解析(解析用ソフト等)・成果発表(学会参加費、旅費、英文校正費、オープンアクセス代等)・質的データ整理のための人員雇用等に充てる予定である。
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