本年度は,多肢選択項目に対する回答データから,各受検者がどのような間違った考え方のもので誤答したのか,について推定するための統計モデルを研究代表者が過去に開発した認知診断モデルの枠組みで開発した。この研究は,学習者のつまずきの理由テストに対する回答データから推定することが可能な統計モデルを開発することであり,教師および生徒の双方に対して教育上の有効性が期待される。 既存の研究では,多肢選択項目に対する回答データを正答誤答の2値データにいったん変換した後に,2値データを分析することで誤答理由を推定することが多かった。しかしながら,多肢選択データを2値データに変換することで情報の損失が発生しており,これによって誤答理由の推定精度が減少していると考えられる。本研究はこの点を克服することを狙ったものである。 シミュレーション研究によって,2値データに変換した場合の既存の方法との比較を行い,本方法の方が誤答理由をより高い精度で推定できることを示した。これよって,既存の方法に対する本方法の優位性を確認した。また,一般社団法人教育のための科学研究所によるリーディングスキルテストのデータに適用し,受検者のうちだれがどのような理由で誤答しているのかを推定した。このデータに対するモデルの当てはまりについても確認し,実データ分析に耐えうる方法であることを確認した。現在,この研究成果を論文にまとめ,国際誌に投稿中である。
|