研究実績の概要 |
本年度は,本科研費研究の屋台骨となる,多肢選択型の能力測定問題に対する回答データから受検者個々人の誤答理由を推定する認知診断モデルの研究を遂行して論文投稿を行った。論文は学術雑誌Behaviormetrikaに採択された(Ozaki, Sugawara, & Arai, 2020)。多肢選択型の能力測定問題の誤答選択肢は,特定の誤りを犯す受検者が選ぶように問題作成者が意図して作成していることが多い。したがって,回答データから各受検者の誤答傾向を分析すれば,今後の学習方針を立てるにあたって受検者と教育者の双方にとって有益である。しかし,回答データから各受検者がどのような系統的誤りを犯しているか分析されることはほぼない。これは,この目的を達成するための統計モデルがなかったからである。Ozaki, Sugawara, & Arai(2020)はこれを達成した研究である。 本件度はさらに,この統計モデルを適用してその価値を検証するためのデータ収集をwebにて行った。収集したのはデータリテラシーを測定するための多肢選択問題の回答データであり,問題作成は研究代表者が行った。開発した統計モデルをこの調査データに適用すれば,各受検者がどの程度のデータリテラシー能力を持っているかということだけでなく,データリテラシーに関してどのような誤った考え方を各受検者が持っているかを推定することができる。したがって,この方法を採用場面で使えば,採用者は各採用希望者を能力の高低だけでなく,多角的視点から採用希望者の合否を判断することが可能となる。
|