研究課題/領域番号 |
18K03058
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
濱口 佳和 筑波大学, 人間系, 教授 (20272289)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 養育行動 / 父母 / 小学生 / 尺度構成 / 身体的攻撃 / 関係性攻撃 / 抑うつ・不安 / 向社会的行動 |
研究実績の概要 |
小学生の子どもを持つ父母が子どもに対して行う養育行動を測定する尺度の開発のためWeb調査を実施した。養育行動尺度の構成は,内外の先行研究をレビューし,向社会的行動と共感・道徳的価値の内在化,感情並びに行動の自己調整,抑うつ,不安障害傾向,反社会的行動・攻撃行動,社会的後退行動について,それぞれ促進的に働く養育行動と抑制的に働く養育行動を特定し,これらから,暖かい支持的対応,感情調整促進的対応,行動調整促進的対応,向社会的行動・共感促進的対応の肯定的養育行動群と冷たい拒否的な対応,過剰に保護的な対応,過剰に制限的な対応の否定的養育行動群からなる72項目5件法の養育行動尺度(小学生保護者用)原版を作成した。NTTコムリサーチに業務委託し,Web上で2種類の質問紙調査を実施した。A, B両タイプ共通に,養育行動尺度(小学生保護者用)原版72項目を入れ,Atypeには既存の2種類の養育行動尺度が,BtypeにはCBCL(親評定用)の抑うつ不安尺度とCSBSP(Crick&Grotpeter,1995)が含まれた。調査対象者は全国の小学生を持つ父母で、Atype506(父270,母236)名,Btype513名(父535,母484)であった。探索的因子分析を繰り返した結果,第1因子は,見守り,子どもの活動への関与,賞賛・承認,誘導的しつけなどから成る「暖かい自立支援的養育行動」,第2因子は感情的叱責,体罰,心理的コントロールなどから成る「攻撃的養育行動」,第3因子は「過保護」と解釈された。α係数は.80を超え,2種類の養育行動尺度との相関は.5~.7程度となり、併存的妥当性が確認された。適応尺度の各変数との関連を階層的重回帰分析で検討したところ,抑うつ・不安,向社会的行動,身体的攻撃,関係性攻撃には3種類の養育行動の総てが有意な関連を示し,10~35%程度を説明することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点では平成30年度は幼児期・児童期小学生の保護者を対象とした養育行動尺度の構成と信頼性・妥当性の検討を行うことが目的であった。調査計画を遂行する中で,幼児期と児童期では保護者の養育行動には少なからぬ相違が見られることが判明し,予算の制約もあったため,小学生の保護者を対象とした尺度の作成こ限定した。小学生の保護者を対象とした養育行動尺度の構成は,2つの独立のサンプルを対象とした2種類のWeb調査により実施した。こちらの調査では調査対象者数をそれぞれ300名程度に設定していたものの,500名程度の回答が得られた点で予想を上回った。尺度の因子構造の確定には検討の余地があるが,50項目程度で,高い信頼性と内容的妥当性,併存的妥当性を備えた尺度が作成されたと言える 特に3下位尺度による児童の攻撃行動の説明率は従来の内外の研究結果より比較的高く,有用性が示されている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年度の研究成果を内外の学会で公表することと,元々計画されたいた児童用能動的・攻撃的攻撃行動の測度を作成し,信頼性・妥当性を検証することである。申請時点での計画では,Rain, et al(2006)のRPQの日本語翻訳版の作成を予定していたが,項目内容が日本の児童の実情にそぐわない点もあるため,海外で開発されている既存の他の尺度も検討し,最適の尺度を選んで翻訳版を作成し,信頼性・妥当性の検討を行う。また,小学生用養育行動尺度をもとに,幼児の保護者用の養育行動尺度の開発も可能な限り進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたWeb調査にかかった費用が当初考えていたよりも安価で抑えられたことと,次年度は配分額が少ないため,予定している調査のために少しでも予算を確保しておく必要があったため。今年度分の残額は,調査で使用予定の市販されている質問紙尺度の購入に充てる。
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