研究実績の概要 |
今年度は大きく2つの研究を実施した。第1は,高校生を対象としたReactive-Proactive Aggression Questionnaire(RPQ)の作成である(研究1)。もう一つは,小学生の子どもを持つ親を対象とした,親の攻撃性・児童への養育行動・児童の心理社会的適応についての調査研究である。研究1については,調査会社にモニター登録をしている全国の高校生200名を対象に,2種類の質問紙調査を実施した(研究2)。ともに日本語版PRQの23項目を含み,A版ではほかに,身体的攻撃,言語的攻撃,敵意(秦,1990),関係性攻撃(櫻井他,2005), SDQ(情緒的問題,行為問題, 向社会的行動;Goodman&Goodman,2009), B版では他に,多次元性共感尺度(登張, 2003), 非行接近・回避尺度(近藤, 2004), 反社会的行動欲求・実行尺度(濱口未発表)の各尺度への回答を求めた。RPQは想定された能動的攻撃,反応的攻撃の2因子が発見され,尺度化の結果,高い信頼性が得られた。いずれの尺度も3種類の攻撃行動と心理的不適応の尺度との間に想定された相関パタンが見られた。研究2では,父母の攻撃性を能動的・反応的攻撃性(濱口,2017),身体的攻撃,敵意(安藤他, 1999), 言語的行動(秦, 1990), 関係性攻撃(磯部・菱沼, 2007)の各側面から包括的に査定し,その2~3週間後に同一の対象者から,改訂版小学生保護者用養育行動尺度(濱口他, 2021, 廣瀬・濱口, 2021), CBCL4/18, CSBST(Crick & Grotpeter, 1995)を実施した。2時点のデータを対応づけ,父母の攻撃性と養育行動,子どもの不適応・社会的情動との関連を検討した。親の攻撃性の多様な側面が養育行動を通して子どもの不適応に影響することが明らかにされた。
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