研究実績の概要 |
今年度は2021年3月から開始したWebによる縦断調査の2年目にあたる。1年後にあたる2022年3月に,昨年と同じ調査会社のモニターで,1年前の調査に参加した,小学生の親を持つ父母411名に対して,昨年と同じ内容の調査をWeb上で参加を呼びかけた。昨年同様,10日間の間隔をあけて,2度の調査を実施した。1回目では,親自身の能動的・反応的攻撃性(濱口,2017),身体的攻撃,言語的攻撃(秦, 1990),関係性攻撃(磯部・菱沼, 2007),共感性(登張, 2002)を測定した。2回目は,親の養育行動(肯定的養育行動,濱口他, 2021;自律性促進,暖かい関与,友好的交流,冷静な叱責:否定的養育行動,桑原・濱口,2021;不適切な罰,過剰な許容,感情的叱責),子どもの身体的攻撃,関係性攻撃,向社会的行動,抑うつ・不安傾向を測定した。昨年度の調査にも参加した対象者のうち,最終的に377名のデータが得られた。分析は,2022年のデータについて,①能動的・反応的攻撃性の因子構造の確認,②能動的・反応的攻撃性並びに共感性と親の肯定的・否定的養育行動との関連性の検討,③親の肯定的・否定的養育行動と子どもの社会的行動(身体的・関係性攻撃,向社会的行動)並びに抑うつ・不安傾向との関連を,階層的重回帰分析により検討した。その結果,2021年調査と同様の能動的・反応的攻撃性の因子パタンが確認され,共感性と肯定的養育行動との高い正の相関,能動的攻撃性と否定的養育行動との正の相関が見られた。また,児童の攻撃行動には親の否定的養育の高さと肯定的養育の低さが有意な関連を示すことが明らかにされた。2021年のデータと2022年のデータを用いて,親の攻撃性・共感性が親の養育行動,児童の社会的行動との関連を検討したところ,類似した研究成果が得られた。
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