研究実績の概要 |
2022年度は, 2022年3月に実施した縦断調査の結果の分析とこれまでの成果発表並びに論文執筆が目的とされた。 2021年に実施したデータの詳細な分析結果を下記諸学会のポスター・口頭発表により行った。カウンセリング学会第54回大会、学校心理学会第24回大会、日本教育心理学会第64回総会、日本心理学会第86回大会日本犯罪心理学会第60回大会。特に犯罪心理学会では、親の能動的・反応的攻撃性と共感性が,養育行動を媒介して子どもの攻撃行動に及ぼす影響をSEMにより検討し、父母共に能動的攻撃性は否定的養育行動を促進され、児童の攻撃行動が促進されること、親の共感性は肯定的養育行動を促進し、児童の攻撃行動を抑制することを報告した。 今年度は2021年3月の第1回と2022年3月の第2回調査のデータを統合し,小学生の保護者の攻撃性と共感性、養育行動、児童の攻撃行動、向社会的行動、抑うつとの関連を検討した。1年の間隔があっても、2021年度の同時点で見られた関連性がほぼ再現され、2021年の横断データで得られた知見の頑健性が確認された。 研究期間全体での成果は以下のとおり。①児童の心理社会的不適応に対して説明力の高い小学生の保護者の養育行動尺度を新たに作成した。②国際的に使用されている子どもの能動的・反応的攻撃尺度日本版を、高校生・大学生を対象に作成した。③親の攻撃性の内、自己中心的に他者を支配しよとする能動的攻撃性が不適切な罰を中心とした否定的養育行動を促進し、児童の攻撃性や抑うつ不安傾向を高めること、④親の攻撃性の内怒りは肯定的養育行動を低め、児童の攻撃行動や抑うつ不安傾向を促進する⑤親の共感性は肯定的養育を促進し、攻撃行動や抑うつ不安傾向を抑制する。以上、親の攻撃性は虐待的養育の促進要因であり、特に力により子どもを支配服従させようとする能動的攻撃性の有害性を発見した点で意義があった。
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