研究課題/領域番号 |
18K03059
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
磯邉 聡 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90305102)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 進路指導 / 教育相談 / 不適応 / レジリエンス / スクールカウンセリング / エコロジカルアプローチ / 見立て / 生活臨床 |
研究実績の概要 |
今年度は4年計画の初年度にあたり、『教育臨床的進路指導』という本課題の中核概念を整理するための基礎的調査を行った。具体的には、①適応上の問題を抱える生徒を積極的に受け入れている公立の全寮制および宿泊型フリースクールの視察(2箇所)、②不登校や中途退学者への進路支援経験を有する中学及び高校教員への質問紙調査、③不適応経験を有するクライエントに対する心理支援の事例検討(複数)、を行った。その結果、『教育臨床的進路指導』に関して以下の点の重要性が示唆された。 ①不適応体験に基づくさまざまな二次障がいへの深い理解:適応上の課題を抱える生徒に対して適切な『進路指導』を行うためには適切な「見立て」が欠かせない。特に不適応という傷つき体験によって、さまざまな二次障がいが本人のみならず家族にも生じる可能性があり、多角的で深い「見立て」が求められる。②「生活」を視野に入れたホールディング環境の提供:これらの生徒を「生活」という視点や側面から力強く支える包括的な環境が求められる。生活リズムや食事、さまざまな日常的な活動が治療的に機能することで、心理的な安心や安全が確保され成長が促進される。③社会性の漸進的な伸長:適応上の課題を抱える生徒は、対人スキルや経験の不足が見られることが少なくない。そこで、これらのスキルや経験を段階的に身につけられるような工夫が求められる。④再チャレンジできる場の保証:何度でも挑戦し、困難を乗り越える経験が得られるような場を保証し、そのようなチャレンジを見守り支える環境の存在が重要である。 これらを通じてレジリエンスが発現し、自尊心や意欲、そして未来展望の回復へとつながってゆく。 今年度の研究の結果、適応上の問題を抱える生徒に対する援助的な視点に基づいた『教育臨床的進路指導』には幅広い視座と多岐にわたる支援が求められることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、さまざまな調査や視察を通じて本研究の鍵概念である『教育臨床的進路指導』を構成する複数の観点や視座を明らかにすることができた。特に、包括的な見立てと重層的な支援の必要性は、今後の進路指導の在り方に対して豊かな示唆を含むものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、『教育臨床的進路指導』の概念の追究に努めたい。 具体的には就労支援施設や関連機関等への視察およびスタッフへのインタビュー、さらに幅広い事例収集等を行うことなどを通じて、適応上の問題を抱える生徒に対する支援の現状と課題を明確化し、これからの「進路指導」に求められる視点や要件をより詳細に探求してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:データ整理等の謝金を必要とする業務が、当初の予定よりもスムースに行われたため、低い執行率にとどまった。 なお、このことによって全体的な研究遂行に支障が生じることはない。 使用計画:国内外の取り組みをさらに幅広く調査するため、主に旅費を中心に執行する予定である。また、これらの調査結果を整理するために主に物品費及び謝金として研究費を執行する予定である。
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