研究課題/領域番号 |
18K03059
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
磯邉 聡 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90305102)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 進路指導 / 教育相談 / 不適応 / レジリエンス / スクールカウンセリング |
研究実績の概要 |
今年度は4年計画の3年目にあたり、昨年度までに得られた知見を踏まえつつ『教育臨床的心理指導』の概念構築をより幅広い視点から行うための調査を継続して実施する予定であったが、コロナ禍のため出張を伴う視察や情報収集を十分に行うことができなかった。代替措置として、メールやビデオ会議システム等を活用した情報収集や意見交換を行うことで、①適応上の課題を抱える生徒に対する支援経験を有する高等学校教員に対する質問紙調査結果の分析、②不適応経験を有するクライエントに対する心理支援の事例検討(複数)の継続、③コロナ禍における適応感の向上を含めた児童生徒の心理的ケアの検討、を行った。 その結果、主に次の7点の重要性が明らかになった。①的確な見立てに基づいた重層的かつ組織的な関わり、②共感的に寄り添いつつ主体性を引き出し、問題に向き合えるような支援、③「その後の漂流」を回避するための確実につなぐ手だて、④正確かつ最新の情報の提供、⑤義務教育段階における適切な進路支援の重要性、⑥守られた環境の中で情緒発達を促進する対面による「スローコミュニケーション」の大切さ、⑦レジリエンスが発揮できるような環境整備。 今年度の研究の結果、適応上の課題を抱える生徒に対する援助的な視点に基づいた『教育臨床的進路指導』には、中学校と共通する部分があるいっぽうで、高等学校に特有の状況や課題があることが明らかになった。また、図らずもコロナ禍により「レジリエンス」の重要性が改めて浮き彫りとなり、適応上の課題を抱える児童生徒を理解し支援する際の重要な視点の一つであることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はコロナ禍にあって、さまざまな代替手段を用いながら、本研究の鍵概念である『教育臨床的進路指導』を構成する複数の観点や視座をさらに立体的に検討することができた。 特に、「その後の漂流を回避するための確実につなぐ手だて」は高等学校ならではの切実かつ喫緊のテーマである。 また、児童生徒の「レジリエンス」を引き出す環境のあり方についても十分な吟味が必要であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は4年計画の最終年度にあたり、これまでに蓄積されてきたさまざまな知見を総合的に取りまとめ、『教育臨床的進路指導』についての概念提示と、これらを効果的に実践するための臨床上の工夫や留意点等について提言を行いたい。 そのために、引きつづきさまざまな代替手段を活用するとともに、状況を勘案しながら視察やインタビュー、さらなる事例収集を行い、知見の精緻化を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由>コロナ禍および、データ整理等の謝金を必要とする業務が、当初の予定よりもスムースに行われたため、低い執行率にとどまった。 なお、このことによって全体的な研究遂行に支障が生じることはない。 <使用計画>国内外の取り組みをさらに幅広く調査するため、状況を勘案しながら、主に旅費を中心に執行する予定である。もしそれが難しい場合はオンラインによる代替手段の充実のため物品費として執行する予定である。また、最終報告書としてまとめるため、主に物品費及び謝金として研究費を執行する予定である。
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