最終年度にあたり、本年は『教育臨床的進路指導』概念をより総合的に考察するとともに、最終報告書の作成を行った。引き続きコロナ禍ではあったものの制限等の緩和により、感染症対策を施した上で対面での事例検討や施設訪問などを行うことができた。具体的には、教育臨床現場における複数の事例分析、精神科思春期・青年期デイケアの訪問と事例分析、複数の自験例の分析を行った。その結果、以下のような知見が得られた。 支援者に対しては、①『「進路指導(ガイダンス)」から「進路支援(サポート)」へ』という姿勢の転換、②「進路」を幅広く柔軟に捉え、大人になったときの適応から逆算した重層的な支援の継続、③支援者が社会参加のさまざまな選択肢や可能性について幅広く知ること、④校内組織だけでなく、「教育」+「福祉」+「医療」+「地域リソース」といった他職種の外部機関と有機的な連携をはかること、⑤連携は在学中だけでなく、卒業後をも視野に入れて丁寧に行うこと、⑥適切な機関につないだり協働できたりする「ネットワーク構築スキル」を磨くこと、の重要性が示唆された。 いっぽう生徒に対しては、①適切な人や機関に上手に頼れるような「援助希求行動スキル」を獲得・伸長させること、②自己理解および自己受容を深め、「身の丈に合った適応」を目指すこと、③継続してエンパワーメントがなされること、④社会参加というゴールを共有し、「同行二人」の姿勢で寄り添う伴走者が存在すること、⑤本人を支える資源としての保護者や家庭支援がなされること、の重要性が示された。 これまでの知見に加え本年度得られた知見を最終的に総合し、『教育臨床的進路指導』に関するガイドラインの作成を行った。
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