本年度は、異質な意見を持つ他者同士の対話を組織できるリーダーシップである「異文化跳躍力」を育成する教育実践を展開し、その成果をまとめる活動を行った。 まず異文化跳躍力を育成するためにデザインした「TAKT型授業」の理念に基づいた教育プログラムの実践を大阪市内の小学校において、昨年度に引き続き実施した。本年度までに明らかになった実践研究の成果をフィードバックし、より高度な授業デザインを行う教諭らの試みを支援することができた。さらに実践を実行した小学校教諭らと共同で、これらの研究授業の成果報告および評価に関する学術書の原稿執筆を進め、完成させた。本学術書は、福村出版と出版契約を行い、近刊予定となっている。 また学会活動としては、コロナ状況によって、異質な意見を持つ他者との交流機会が減少しているという問題意識を、小学校の実践研究を行う研究者らと共有した。その上で、TAKT型授業を含む、異文化跳躍力に該当する能力を育成する試みを行う先進的な授業実践者を招聘し、日本教育心理学会(研究委員会)主催のシンポジウムを企画・実施した。他者との対話を実現し得る授業及び学級・学校経営のあり方について、幅広い視点から提案することが出来た。さらに日本科学未来館における、異文化跳躍力の育成を目指した実験教室実践への支援も成果を結び、プログラムの完成に至った。 研究期間を通じ、対話に関する理論研究および最新の実践研究に関する検討によって、批判的な見解を持つ者同士の対話を促進する資質としての異文化跳躍力を養成する授業プログラムの開発・実施を支援するという本研究の目的は概ね達成出来たと考えている。さらに理論研究・実践研究の両面において、多くの論文・著書執筆および学会発表を行えたことも本研究の成果である。
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