研究実績の概要 |
中学生時代の部活動の長期的な影響を検討することを目的とし,2020年7~12月に3大学の大学生,大学院生に質問紙を依頼し,485名(男性232名,女性249名,その他2名)から回答を得た(部活動経験者476名)。「中学時代の部活動は,今の自分の糧となっている」について,5段階(1.まったくあてはまらない~5.ものすごくよくあてはまる)での回答を求めた。χ2の結果,大学による差が有意だった(χ2(8)=33.56, p<.001)。A大学では「ものすごくよくあてはまる(5)」(A大学56.3%,B大学32.9%,C大学43.6%)が,B大学では「よくあてはまる(4)」(A大学24.7%,B大学39.7%,C大学18.2%)が多く,C大学では「まったくあてはまらない(1)」(A大学4.0%,B大学4.1%,C大学12.7%)「あてはまらない(2)」(A大学6.3%,B大学12.3%,C大学20.0%)が多かった。 個人的要因が部活動においてどの程度満たされていたかを探るために,自分のタイプとして,OEQ-Ⅱ(Falkら,1999)から「身体を動かすのが好きだ」「芸術を鑑賞していると,我を忘れるほどに没入する」「音楽を全身で味わえる」「問題を深く掘り下げることが好きだ」を尋ねた。「中学時代の部活動は,今の自分の糧となっている」との相関をみた結果,有意な相関がみられたのは「身体を動かすのが好きだ」(r = .35, p < .001)のみであった。中学校の部活動は,身体を動かすことが好きな中学生の個人的ニーズを満たしうる環境として機能することが推測された。一方,身体を動かすことが好きではない個人にとっては,「糧にはなっていない」と回顧する傾向が高いこと,芸術や音楽,探究のニーズの高い個人にとっては必ずしもそのニーズを満たしうる場所としては機能しきれていない可能性が示唆された。
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