研究課題/領域番号 |
18K03063
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
田爪 宏二 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (20310865)
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研究分担者 |
高垣 マユミ 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (50350567)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 認知的情報処理 / 認知的個人差 / 実行機能 / 授業力 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、授業力及び認知的能力に関する文献研究を行なうと共に、実行機能等に関わる認知課題の分析を行い、認知的情報処理能力及び性格・情動特性の個人差と教師に必要な資質能力(授業力)の関連を調査する質問紙を作成、改訂した。特に本年度は授業力の具体的な姿を測定することを目指し、授業力に関わる項目の見直しを行なった。 本年度は教員養成大学の実習準備期(2年生)及び、実習期(3年生:教育実習後)、及び職業選択期(4年生:教育実習の前後)の学生に質問紙調査を実施した。但し、コロナウイルス感染拡大の影響で教育実習のスケジュールや内容が大幅に変更されたため、一部の調査の実施と経年的な比較が困難となった。 昨年に引き続き、実習における意識や態度に関する指標として、教育実習の体験、指導を受けた感想、教育観・教師観の変容、及び実習における不安との関連についても検討した。分析の結果、教師効力感の側面、特に学級運営や教科指導といった教師による主導的で計画的な活動における効力感と、児童・生徒との人間関係に関する効力感との間で、認知的個性の影響が異なっていた。特に教師が主導的に行い、また事前の計画が必要な活動においては、活動を計画的、順序立てて行う能力の高さが、教師としての効力感や自信の高さに繋がることが示唆された。さらに、他者の視点や評価を気にしすぎるすることが教師効力感を低下させていた。これらの結果から、教師、あるいはそれを志望する学生としての資質と認知的個性との関係については、多面的に捉える必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度に引き続き、認知的情報処理能力の個人差と授業力とおよび教職に関連する性格・情動特性の関連についての調査を進めると共に、教師力に関するより具体化な質問項目を追加した調査、分析を進めている。 しかしながら、コロナウイルス感染拡大の影響で教育実習のスケジュールや内容が大幅に変更されたため、特に教育実習や職業選択の時期にある3、4年生の調査が難しくなった。その中でも可能な限り調査を実施したが、それらについても、教育実習の経験が従来とは大きく異なっているため、経年的な比較が難しくなった。また、研究の成果の報告機会となる学会の多くが中止、あるいは会場に参集しない形での開催となったため、研究発表を通した研究者との情報交換がかなり制限されたものとなった。 上述の状況から、本研究課題の進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」の項でも述べたとおり、コロナウイルス感染拡大の影響で調査の実施や学会参加による成果報告、情報収集が制限され、本年度の計画通りに行うことができない部分があった。このため、共同研究者や所属機関とも協議の上研究計画を見直し、研究期間を当初の2020年度から2021年度に延長し、改めて調査の実施と調査データの経年比較を行うこととする。その上で、データを総合的に分析し、「認知的個性」が授業力におよぼす影響、及び教職に関連する「性格・情動特性」との関係に関する、教員養成課程における縦断的な変化の過程について検討するとともに、養成課程において「認知的個性」を生かしながら質の高い授業力を持つ教師を養成するための教育的支援の具体的手法を策定する。それらの結果を踏まえ、養成課程をもつ大学や教育現場へ教員養成のあり方についての情報の発信、提言を目指す。 但し、昨今のコロナウィルス感染症拡大の影響は2021年度も続くことが予想されるため、研究の遂行においては共同研究者や所属機関とも協議の上、コロナ下の影響を加味しながら調査の実施や分析を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額は、コロナウィルス感染症拡大の影響により、出張予定の学会(日本教育心理学会(2020年9月)、日本心理学会(2020年9月)、日本発達心理学会(2021年3月)等)が参集しない形での開催となったことや、対面による研究打合せの中止による旅費未使用分、および物品の価格の変動等によって生じた差額である。 (使用計画) 研究期間を延長した2021年度の学会参加費用及び物品等の購入費に充てる。
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