昨年度に引き続き、授業力及び認知的能力に関する文献研究を行なうと共に、実行機能等に関わる認知課題の分析を行い、認知的情報処理能力および性格・情 動特性の個人差と教師に必要な資質能力(授業力)の関連を調査する質問紙を作成、改訂した。 本年度は教員養成大学の実習期(3年生:教育実習後)、および職業選択期(4年生:教育実習の前後)の学生に質問紙調査を実施した。但し、昨年に引き続きコロナウイルス感染拡大の影響で教育実習のスケジュールや内容が大幅に変更されたため、一部の調査の実施と経年的な比較が困難になった。このため、共同研究者や所属機関とも協議の上、調査の実施と調査データの経年比較についてはコロナウイルス感染拡大下の状況を踏まえながらを行った。その上で、過年度のデータも含めて総合的に分析し、「認知的個性」が授業力におよぼす影響、及び教職に関連する「性格・情動特性」との関係に関する、教員養成課程における縦断的な変化の過程について検討した。その結果,生徒との相互作用,授業運営スキル,個別に応じた支援,柔軟な授業運営といった授業力は,活動を効率的に行う能力や他者の感情への気づきの能力の高さが影響を及ぼしているなど、教師、あるいはそれを志望する学生としての資質と認知的個性との関係については、多面的に捉える必要があると考えられた。 それらの結果を踏まえ、養成課程をもつ大学や教育現場へ教員養成のあり方についての提言についてまとめた。例えば,実習指導の中で学生に自身の認知的個性を自覚させ,それを活かした実習のあり方についての助言を行うことが有効であると考えられた。
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