研究課題/領域番号 |
18K03065
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 創 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80437178)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社会性 / バイアス |
研究実績の概要 |
本研究は,幼児期から児童期の子どもを対象に,「子どもの社会性を支える『察する』心の発達心理学的研究」に着目し,その発達過程を実証的な研究によって検討するものである。 令和元年度は,社会性を支える「察する」心が働く上で,公平感に関わる分配の好みの変化に着目して検討した。限られた物資をどのように分配すべきかは,人間の社会性や道徳の本質にかかわる大きな問題であるといえる。具体的には,これまでの研究では,資源の分配において,年齢が増すとともに,利己的な分配から平等な分配を好むようになることが知られている。この傾向が強い場合,平等バイアスと呼ばれることもある。しかし,私たちの日常では,魅力的なものの分配(利益の分配)だけではない。避けたいものの分配(不利益の分配)も日常的にはしばしば存在し,心理学の先行研究でも示唆されている。そこで,子どもを中心にしばしば用いられる手続きを参考に,自分と他者の物資の取り分について2つの選択肢を用意して,参加者にどちらの分配が好ましいかを選ばせる方法で,これらの2つの分配の条件を設けた調査を行った。その結果,利益の分配と不利益の分配のいずれも,自分の分配数が他者と比べて多かろうと少なかろうと,自分一人が異なる状況を嫌う傾向があることが明らかになった。 以上より,これまで明らかになっていた平等分配の好みについて,分配内容の正負の両面で大きな違いはないことが見え,社会性を支える道徳の本質について,一歩深いレベルで検討することができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的とした「察する」心が働く上での分配の好みについて,データを収集できたほか,これまでのデータを論文にまとめ,投稿ができたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「おおむね順調に進展している」と判断されたものの,今後も「察する」心について,当初の目的に沿いつつ,多面的に調査を続けることで,子どもの社会性の発達について,さらに明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の参加を考えていた成果報告のための国内学会等について,校務と重なり,出張が困難となったため,その旅費に相当する分が未使用となったためである。 研究を遂行する上で必要となる物品や書籍の購入,および成果をまとめた論文の英文校閲費などに使用する。また,研究成果の発表のための国際学会の出張旅費としても使用する予定である。
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