研究課題/領域番号 |
18K03069
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
西山 久子 福岡教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (80461250)
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研究分担者 |
鎌田 雅史 就実短期大学, 幼児教育学科, 准教授 (10610040)
迫田 裕子 九州共立大学, スポーツ学部, 准教授 (90714767)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育相談の定着 / 学校コンサルテーション / 校長のリーダーシップ / 教育相談コーディネーター / 教育相談担当者 / 分散型リーダーシップ / エンパワリングリーダーシップ |
研究実績の概要 |
本研究では、2022年度、以下の内容に取り組んだ:①校長の教育相談へのリーダーシップ行動の解明と担当者との相互作用に関する理論モデルの構築,②校長のリーダーシップへの教育相談担当者からの上方向の学校コンサルテーション方法の実践モデルに関する検討,③教育相談担当者および管理職に向けた研修プログラムの提案である。 ①は、2022年度後期にWeb調査を実施し、教育相談の定着に影響を及ぼす校長のリーダーシップに関わる先行研究をふまえ,組織文化とリーダーシップに関する質問紙調査を行い、分散型リーダーシップと校長によるエンパワメントに関する事項をまとめた。そのなかで、教育相談活動に対する組織体制の中での担当者を中心としたコンサルテーションと管理職教員のリーダーシップの在り方についての理論モデルを生成した。教育相談体制に関する量的調査を実施する段階に至っている。 ②は、当初予定していた校長と教育相談担当者の相互作用をとらえる際の、担当者の役割像が曖昧であり不明確であった。よって、教育相談体制に自治体をあげて取り組んでいる地方都市を対象として、中学校における「教育相談コーディネーター」に対象を絞り,役割像を明確化するための質問紙調査を行った。其れによると、教育相談コーディネーターは,文科省が示す役割像の中でも,介入的支援に重点を置いた活動を行いがちであり,心理教育プログラムの提案などの予防的な取組に対する役割意識が薄いことが示された。 ③は、学校コンサルテーションにおいても,不登校対応に焦点化しICTを活用したコンサルテーションと,不登校になりにくい支援が提案できるよう予防教育を中心としたコンサルテーションと,これらを学校全体の取り組みとして整理する,システムへのコンサルテーションとの3つの柱に整理されることが示唆された。これらを,日本学校心理学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において,2022年度は,学校での教育相談に関する校長のリーダーシップと担当者の相互関連性を明確にするための質問紙調査に向けた理論研究を行い,併行して実践的力量の向上に向けた取組を試行した。それらの進捗状況は以下の通りである。 ①校長の教育相談の定着化に関わるリーダーシップ行動について、Web調査で、小学校・中学校・高等学校の一般教員の勤務校での活動に対する認知について,教育相談の定着化と校長によるエンパワリングリーダーシップ(EL),教員集団の組織文化としての分散型リーダーシップ(DL),教育相談活動のシステムコーディネーションに関する認知との関連性を検討した。これについては2023年度教育心理学会で発表する予定である。 ②校長への教育相談担当者からの上方向の働きかけを行う人材に対する、学校コンサルテーション方法の検討については、中学校における「教育相談コーディネーター(Co.)」に対象を絞り,役割像を明確化するための75項目の選択式質問と、自由記述2問からなる質問紙調査を行った。その結果、役割像として、教育相談Co.の専門性に対する認識は、不登校を中心とした3次支援を専門職と共に担うことに集約され、一次支援の領域において担う認識が共有されていないことが把握された。これについては、2023年度学校心理学会で発表する予定である。加えて、一次支援の実践力向上に向けた学習会を研究協力者と行い10回のオンライン協議と1回の検討会を開催した。 ③ICTを併用した不登校対応コンサルテーション・不適応予防コンサルテーション・予防と介入のバランスがとれたシステムコンサルテーションとの3つの柱で、Web上でのプラットフォームを構築すべく構想を進めており、2023年度前半で立ち上げる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる2023年度は,以下の内容をまとめる予定である。 ①理論研究として進めている担当者の影響方略と,校長のリーダーシップの相互関連性について,先行研究を収集し,それらを統合すること,および現場の実践とリーダーシップ論を関連付けることを目途として,レビュー論文にまとめる。加えて、研究分担者等と協議し,研究の進捗状況を再度検討した上で,学校が置かれた状況を踏まえて,これまで累積した「教育相談の定着化と校長によるエンパワリングリーダーシップ(EL),教員集団の組織文化としての分散型リーダーシップ(DL),教育相談活動のシステムコーディネーションに関する認知」の3側面から、校長の教育相談に関わるリーダーシップ行動と担当者との相互作用について、先行研究を精緻化したモデルの検証を論文として投稿する。 ②学校コンサルテーション方法の検討と研修プログラムの提案を目指す本研究では,教育相談担当者・教育相談コーディネーターの認識を調査し,自治体との協働により、研修効果の確認を兼ねて、自身の実践力を整理するルーブリックを作成し、研修の体系化・構造化の作業をまとめ、それに基づき、研修を提案する。 ③成果集約に関し②のルーブリックをウェブサイトで示し、先行実践で集積している各種ツールやチェックリストをダウンロードできるよう、次年度前半で資料整理を行い,学校コンサルテーション資源の共有を行い、活用のフィードバックを得る予定である。 さらにこれらの内容について、2023年度内に図書化に向けた原稿の集約を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙調査の実施が昨年度後半になったため,研修として提案する内容の整理が2022年度内で収まらなかった。そのため,ウェブサイトの当該内容の出費を2023年度に行うこととした。 2023年度は,ウェブサイトを立ち上げるためのHP設計を完成させ,これまで集積してきた成果を提案できるプラットフォームを構築する。これに並行して,これまでの理論モデルに基づいた研修体系を教育相談担当者(コーディネーター)および管理職に対して実施し,学校コンサルテーション資源の共有および研修資料の提供とフィードバックの集約を行う予定である。 また,訪問・対面による調査の一部を,Web調査業者に委託しており、2023年度にその納品を受け正式に稼働させる計画であり,その支出を予定している。また,2023年度が最終年度となることから,成果集約のための報告書作成において,当初予定した通りの予算支出を予定している。
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