研究実績の概要 |
本研究の目的は、①分数認知に熟達した成人の分数の基準数およびそれを利用できる分数のレパートリーを特定すること(研究1)、②児童を対象にして、基準数のレパートリーが発達的にどのように拡張するか、さらにそのレパートリーの大きさと算数成績の関連について横断的な研究で明らかにすること(研究2)、③児童のレパートリーの拡張が可能な学習プログラムを開発すること及びその効果の数一般の認知への波及性の検討(研究3)である。 平成30年度は、数認知研究で伝統的に用いられてきた数直線推定課題用いて、分数の基準数、基準数を利用して量を把握できるサブ基準数になる分数、それら以外の量を把握できず割算のような過程を利用してその値を求めるような複雑な過程を要する分数を特定するための研究を行なった。 30名の大学生に対して、数直線推定課題を行なった。数直線推定課題の分数刺激として、18個の既約分数を用いた。実験の結果、(1)分母の数が大きくなるほど、数直線推定に要する反応時間が長くなり、かつ、真の数量からの誤差距離が大きくなること、(2)1/2は反応時間が短く、誤差距離も小さいこと、(3)分母が3である分数の反応時間が短くなることが明らかになった。これまでの唯一の先行研究であるLiu(2017)は、1/4, 1/3, 1/2, 2/3, 3/4が基準分数である可能性を報告しているが、本研究の結果は、1/2, 1/3, 2/3が基準分数であることを示している。
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