本年度では、これまで取り組んできた「子どものネガティブな感情表出を受け止める養育力」の抑制、向上要因についての研究結果をまとめた上で、児童虐待予防につながるメカニズムを検討した。またそれらの成果を基に、一般家庭の虐待予防に向けた養育力を高めるペアレント・プログラムを開発し介入研究を実施した。 プログラム開発の一環として、子育て支援機関の支援者および支援を受ける親のインタビュー調査を行った。それと同時に、既存の子育て支援プログラムの研修にも積極的に参加し、乳幼児の親に必要となる支援要素と介入のポイントについて吟味した。綿密な準備を経て、子どものネガティブな感情表出への対処法に焦点を当て、家庭内の情緒的交流を好循環なものにし、安全・安心な家庭環境を実現するプログラム開発を行った。人々の心身の健康の基盤である“安全・安心感”を、子育てという人間の尊い営みを通して次世代に伝え、拡大するという願いを込めて、SHC(Social Health Cycle)ペアレントトレーニング・プログラムと命名した。 本プログラムは、乳幼児を持つ親のグループを対象とし、1.5時間×6回分で構成されている。多方面からの協力の下、実践研究を9月から実施し、さらに3か月後フォローアップ研究も実施した。全日程はコロナ感染予防の観点からZOOMによるオンライン形式を用いた。本プログラムを受けた参加者の、心理的指標の変化やインタビュー内容からプログラムの有効性が見られた。 研究成果を発信するためのホームページを作成した。またインタビュー調査の典型例を取り上げ、「民間の子育て支援機関における支援のあり方と有効性の探索の検討」というタイトルで論文にした。実践研究の内容は学会発表や論文化する予定である。
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