適切に食物を選択することは,ヒトが毒を避け健康を維持するだけでなく,特定の社会や文化のメンバーの一員としてのアイデンティティを形成するためにも極めて重要な課題である.最近の研究は,幼児は親や仲間の食行動や証言を観察することで「何を食べるべきか」また「何が美味しいか」を学んでいることを明らかにしつつある.本年度は,幼児が,仲間からどのように,食べ物の選好や嫌悪を学ぶのか,またその根底にある概念について検討した.
幼稚園年長児(N=32)を対象に実験を行った.その結果,幼児は食べ物の好みは異性より同性の他者の間で共有されているが,食べ物の嫌悪は性別に関係なく多くの人の間で共有されていると,考えていることが明らかとなった.このような好みと嫌悪の般化の非対称性は,ヒトが自らの属する社会や文化の中で好まれる食べ物について学ぶと同時に,毒を避けるための重要な仕組みが備わっている証拠であると考えられる.
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